福岡市における工事契約の最低制限価格が改定され2008年1月1日付から施行された。改定前の最低価格は単純に設計金額の70%相当額だったのが、今回の改定は少々複雑になっており、設計の積算にかかわる積算項目のうち「直接工事費の額」「共通仮設費の額」「現場管理費に5分の1を乗じて得た額」の総額に対して1.05倍した相当額と改められた。ただし、上記により算出した額が設計金額の70%相当額を下回る場合は70%相当額、設計金額の85%を上回る場合は85%相当額となり、最低制限価格は2つの最低制限価格を設けたことになった。
こうしたなか、2月4日分水道局発注の入札結果が公開された。3件とも南区のφ1350mm配水管布設工事で、予定価格は屋形原2丁目の工事が1億7,032万円、皿山4丁目が1億5,860万円、野多目3丁目9,396万円(消費税含む)だった。この3件の入札結果の落札率はすべて85%(1件は84.7%)となり、さらには、参加した業者の多くが改正された最低制限価格を提示、多数のくじ引きによる競争入札となった。
ある土木工事業者は「まず70%で請けた工事は非常に厳しい単価となります。元請しても下請に廻したら、その経費だけで利益はなくなります。元請なんか出来なくなりますよ」と低価格競争の厳しさを語る。今回の改定で従来の最低価格70%から85%へ引き上げられたために利益を確保することは出来るだろうが、相変わらずくじ引きの多さは変わらない。
この改正された最低制限価格について福岡市は「最低価格を段階的に引き上げることで企業の体力をすり減らすことを防ぎ、特に工事品質の低下を防ぐことが出来ると考えています」とコメントする。たしかに、談合が蔓延した社会も困り物だが、過剰競争に陥り手抜き工事に走られるとこれまた困る。
市の契約状況については建築工事がまだ減少傾向にあるにせよ、土木工事についてはなんとか減少を免れている状態にある。だが、国を始め公共工事関係は抑制される方向にあるので、さらに公共工事が減少するのは間違いない。願わくは、近年のように急激な抑制政策を行うのでなく、随時改正されたシステムの導入を果たし、緩やかに減少しながらも混乱なき公共工事の契約が出来るようにしてもらいたいものだ。
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