新たな展開 陳情行政と国会議員の在り方
福津市が国土交通省に対し陳情を行った折、「うに瓶詰め詰め合わせ」を土産として渡していた問題は、先日ネットI・Bで速報を流したとおり、衆院福岡4区の渡辺具能代議士事務所の政策秘書が陳情時のアポイントを取り、陳情そのものにも同行していたことが明らかとなった。
また、陳情先として、同省の土地・水資源局長に会っていたことも確認された。
渡辺代議士は、平成18年11月の陳情当時、国土交通副大臣の要職にあり、所管官庁への陳情にたいする口利きに対し、批判の声も出ている。
同政策秘書によると、「地元の大きなプロジェクトだから」としながら、紹介の事実、局長と会った事実などについては認めている。
また、福津市の陳情に関しては、その他にも複数回、同行したとしている。
国交省副大臣の事務所として、規範(「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」)に抵触することはないか確認したが「そうした認識はない」とのことであった。
肝心の、福津市側が「うに」を渡したかどうかの記憶はない、としており、公費で購入された「うに」の行方は依然として不明のままである。
記憶がないというのは、実に便利な言葉ではある。
しかし、国交省側が、「もらった者はいない」としている以上、渡したとする福津市か国交省のどちらかが嘘をついていることになる。
この際、問題は金額の多寡ではなく、公費支出された物品の授受に関する事案なのであるから、福津市と国交省できちんとした答えを出すべきであろう。
断っておくが、今回に限っては、福津市側に虚偽の回答はなかったと考えられる。
公文書として、支出目的と領収書まで残しているのである。市側の話が嘘なら、市長の首が飛びかねない。平成18年11月の「うに」購入の起案は福津市の担当課であるが、これには市長の印鑑も捺してある。またその他3回の「うに」購入はについては、支出を命じたのが、他ならぬ市長だからである。
「うに」の使途について虚偽があれば、福津市の公費支出全体の信頼性が失われてしまう。
一方、国交省側の官僚が、「もらっていない」としている「うに」を、本当はもらっていたとしたら、当然、何らかの処分が下されることになるのだろう。
利害関係を有する官僚がもらっていれば、「国家公務員倫理規程」に違反することは、これまで報じてきたとおりである。
ただ、国交省側が本社取材班に対し、「調査の結果、利害関係者である者は二人」としていたことは、実は土地・水資源局長を入れると3人ということになる。
この点は改めて国交省にも確認した。国交省側の対応には、大いに疑問が残る。
陳情行政、国と地方の関係、公共事業に影響力を振るう国会議員。
この国のゆがみやひずみをもたらした、根源的問題が見えてくる「うに」持参陳情問題である。
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