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モノづくりを支え続けた60年 「鉄の都」の老舗の真価は(下)| 企業研究
特別取材
2008年2月28日 13:07

FA機器での拡大が望まれる

 同社の主力取り扱い品目は、次の6種類に大別される。(1)機械装置・設備、(2)機械部品、(3)油脂・化学製品、(4)電気・計装品、(5)冶・工具、(6)その他設備(表-1参照)。

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 前述したように同社の客先は、鉄鋼金属、非鉄金属関係、造船造機、化学、自動車・航空機、そして電気関連のため、機械工具の中でも重厚長大産業そのものに特化していると言える。取扱商品を具体的に見てみると、数千社ある仕入先のうち油脂・化学製品が金額的に多いことが分かる。これは、金属加工油・切削油・研削油・防錆油といった一般にはなじみのないものであるが、金属加工をする際には必要不可欠なものである。

 切削油とは加工点を潤滑・冷却することにより、精度を向上させ、工具の磨耗を防ぐ効果がある。また、フラッシング(閃光)効果により、切り屑を洗い流し、精度の高い機械運転の稼動を助ける。さらに、切り屑などの熱により、機械の熱変異防止にも役立つと言われている。しかし、その一方で、問題点もある。金属加工工場内の汚れを引き起こし、長期的に見れば、機械の細部に侵入し、機械にダメージを与えるなどの短所も持つ。

近年は、切削油循環ポンプの電力省エネ化や、切削油が最終的に金属粉を含んだ廃油となるため、環境的な面から切削油を使用しない加工法(ドライ加工)、微量の油で加工するセミドライ加工(MQL加工)が提唱されている。また、鍍金(メッキ)処理の仕入額も金属加工油についで高い。製鐵など重厚長大産業を主力としていれば、頷ける内容ではある。

 しかし、機械要素部品(FA機器)の仕入額は意外と低調のようだ。製鐵=油圧機器といえるほど、ほとんどの現場であまたの製品が使用されているのが実情であるが、FA機器の主な仕入先は空気圧機器メーカーのSMCと油圧機器メーカーのボッシュ・レックスロス。97年に採択された京都議定書の一件以来、とくに産業界では環境に対して問題視されることが多くなっている。いまや通常の製造業では、装置の主流が「電気」へとシフトしていることは事実である。しかし、鉄鋼や造船のような業界では、やはり高い圧力が求められることから、油圧機器の使用がある。国内にある油圧機器メーカーとのさらなるタイアップが必要ではないだろうか。

 そのほかの細々とした商品は商社からの購入となっている。機械部品や電器機器には必ず寿命があり、メンテナンスが必要となるため、需要はあるはずだ。小回りのきく会社を目指している以上、FA機器の分野にも深く入り込むことが、今後の売上高拡大につながるはずであり、同社の課題点であろう。

 次に事業所について見てみよう。13カ所ある出先のうち、核となるのは君津(千葉県)、鹿島(茨城県)、中国(広島県)、戸畑、長崎の5店舗であり、全て「支店」となっている。社屋もこの5店舗はすべて自社所有である。とくに新日鐵君津や住友金属鹿嶋などは大口客先として、仕入先とタイアップしながらの取引であり、そのほかの出先にも売上高の面で大きく影響を与えることになっている。


現状、そして将来へ

 同社を取り巻く状況を見てみよう。06年度(06年4月から07年3月)の国内粗鋼生産量は1億1,775万トンと、73年度に次ぐ過去2位を記録。そして、07年の粗鋼生産量は34年ぶりに過去最高を記録しそうである。この理由は、日本国内だけでなく、世界中で生産を拡大している自動車用の高級鋼の需要が増していること、そして造船や機械でも伸張したことがあるからだ。

07年3月期の決算期において大手鉄鋼会社は経常黒字ベースではあるが、軒並み過去最高を記録した。鉄鋼、造船関連が主力客先の同社も例外ではなく、その恩恵を受け、売上高こそ111億3,000万円と前期比1.04%のマイナスとなったが、経常利益は7億9,600万円を計上し、前期比23.6%の増益となった。

 平たく言えば、業界の好景気に上手く乗れたということである。取材過程で「造船関連業界は2年先くらいまで受注がある」といったコメントがよく聞かれた。しかし、逆に「2年後以降が不安」といった声も多かったのも事実。業歴60年の同社ではあるが、今後の営業展開が今まで通りであれば、さらなる繁栄は望めないはずである。自動車産業や半導体産業への進出、もしくは取扱いアイテム数、とくに機械・電機部品などを増やすことが解決策と思われる。北部九州には、それを満たしてくれる企業がいくつも進出している。

 “斜陽産業”と言われて久しい重厚長大産業。筆者は最盛期の「鉄の都」のことは伝聞でしか知ることができないが、以前のような活気を取り戻すのが難しいのは想像できる。しかし、モノづくり大国日本を支えていることは間違いない事実だ。そこに長年携わってきた同社が今後も永続的に発展するには、社是のひとつにある「知識を世界に求め、常に新分野の開拓に努めよう」という一節に尽きるのではないか。同社のさらなる飛躍に期待したい。

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結論

 産業機械工具卸として鉄鋼・造船などに強みを発揮するテラダ産業。近年の景気の波に乗り、業績を伸ばしていることは事実である。
 そこで同社の財務指標を検証してみると自己資本比率は約42%、流動比率約161%、当座比率約119%、営業利益率約6%、経常利益率約7%、当期利益率約4%。また短期借入金は2億3,000万円、長期借入金は1億9,000万円となっており、月商売上の0.45倍で資金的には問題ないと思われる。

 近年、世界的な自動車用の高級鋼の需要が高まったことにより、鉄鋼業界は好景気に沸いている。今後2~3年はこの状況が続くと思われる。しかし、この状況がいつまで続くのかは不透明で、誰にも分からない状況。右から左へ、ただ単に物を流す卸売り業者は、時代の流れに対応できなくなるであろう。同社にはこれまでに培ってきた様々な土壌があり、近年は増収で推移してきている。しかし、現在の景気が下火となった時にこそ、老舗機械工具卸としての真価が問われる時である。それまでに同社がどれだけの有益な仕掛けを打てるかを注目していきたい。


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