地球環境を守りながら儲ける時代へ
エネルギーと物の大量生産・大量消費・大量廃棄という現代社会システムが深刻な地球環境の危機を引き起こし、現状維持不可能な状況を招いている。湯水のように化石燃料を消費することで、資源の枯渇と自然環境の破壊をもたらすシステムは、地球自然と社会との関係を破壊している。これに対して、サステナビリティー (Sustainability)とサブシステンス(Subsistence)という考え方が、地球環境の危機のなかで登場してきている。これは、「永続的」に「自然生態系のなかで人間社会を維持し、再生していく仕組み」というものであり、こうした考えが「企業の社会的責任」(CSR)と結びついたものとして、大企業のなかで展開されてきている。
日本は2度の石油ショックを経るなかで、省エネ技術は世界に冠たるものがある。科学技術の発展が環境問題のすべてを解決する、というのは幻想だとしても、こうした省エネ、省資源、環境保全型経営は、環境と社会の持続社会の実現に寄与することは間違いない。近年とくに、各企業が競い合って、いかに自社の製品が地球に優しいか、いかに地球環境に配慮しているかをテレビや新聞などで宣伝している。
企業は単に「儲け」るから「地球環境を守りながら儲け」る時代へ確実に変化している。すでに、3R(無駄を減らす、再利用する、再資源化する)への転換のなかで、身の回りのボールペンなどの日用品やユニバーサル製品の流通が多く見られ、衣食住にも及んでいる。たとえば、エアコンや冷蔵庫などは省エネ製品の売上が伸び、ハイブリッド車のような燃費が良い車を選択するなど、市民は、地球環境保全のための省エネ製品を、選択の基準にする傾向が強まっている。さらには、太陽、水、風、バイオマスという再生可能エネルギーの利用などの取り組みも始まっている。こうした変化は、これまでの大量消費と大量廃棄を前提にした生産のあり方から、社会や市民が求める環境保全型へ転換していくことになろう。
こうした転換は、都市のあり方の変更や、地域の再生、そして生活の質の豊かさの獲得を促していく可能性を持っていよう。バイオマスを利用したレストランの経営など、福岡県の近隣においても見られる。あるいは企業とNPOなどでは、市民との共同事業形態といった新たな動きも始まってきている。
アンテナを常に張りながら、こうした変化をキャッチすることによって、新たなビジネスチャンスが生まれてきているとも言える。たとえば、住宅も環境共生という視点から新築やリフォームを考えたらどうなるのか、ニッチ産業も含め、ビジネスチャンスが大いに生まれてこよう。食料についても、「フードマイレージ」を減らすという視点から生産、流通のあり方を企業として転換していくことで、地域の再生と生活の質の向上に貢献できる。
企業が環境保全のための活動を進めることで、企業内部にも変化が起こらざるを得ない。環境を軽視し、儲け一本やりの企業は評価が低く、商活動でも不利になっていく。環境保全を重視した企業活動を行ない、そのうえで儲けるという方向に変化していることは、環境マネジメントやCSRを導入する企業が増えていることからも明らかである。いずれにしても、温暖化が進行していくなかで、CO2排出削減や温暖化問題への対応が、企業にとって最重要評価基準になっていくのは間違いない。逆に言えば、温暖化防止のための生活関連製品や提案を行なう企業にとってはビジネスチャンスであり、市場での競争を勝ち抜く企業になり得るのである。