積水ハウスの興亡史を語るのは今回をもって終わる。積水ハウスは後2年で創業50周年を迎えようとしている。半世紀の間、海図を持たない船のように、先達のいない住宅産業を高度成長の中、ひたすら走りながら、成長、拡大、改善を繰り返し、今日に至っている。
積水ハウスの掲げる、人間愛を柱に据え、人間性豊かな住まいと環境をテーマに社会に提案をすることは、積水ハウスの使命であり、誇りでもある。このような住まい手本位の高品質住宅の提案はいつの時代も人々に受け入れられ続けるだろう。
今世紀に入り、テロによる社会不安、思いもよらないサブプライムローンによる経済の混乱、地球温暖化、環境汚染、少子化と、世界も、日本も経験の無い未知の世界に突入している。
積水ハウスにも新しい時代に即応した時代精神が生まれるだろう。そして、どんな時代になろうが、人間愛を根本として、新しいライフスタイルの提案をし続けるだろう。積水ハウスのチャレンジは終わる事はない。次の半世紀も隆々と繁栄し続けることを信じている。
今回取材に協力をいただいた多くの方々に感謝を申し上げたい。また日経に連載された田鍋元社長の「私の履歴書」も参考にさせていただいた。取材をしたすべての方が表題の通り、積水ハウスを愛する方々ばかりだった。これほど積水ハウスに愛着を持っている方が多いとは当初予想もしないことだった。田鍋元社長の事業に対する姿勢、社員に対する愛情、工事店に対する感謝の気持ち、そして自分に対しては厳しく律せられたことが社員の心の中に生き続けていた。
だからこそ、和田社長に田鍋元社長と比べ、物足りなさを感じ、きつい言葉が多かった。田鍋へ郷愁がまだ残っているのだろう。名社長と言われる人、東芝の土光(めざしの土光といわれている)、積水ハウスの田鍋、伊藤忠の丹羽、何れの方も、自分を厳しく律し、事業に対する姿勢は常にチャレンジ精神で溢れていた。
今年5月から、新聞辞令だけだが、和田、安部の体制になる。二人とも一線の営業時代はトップセールスマンだった。営業に関しては二人の叡智で、いかなる難局にも乗り越えていくだろう。
積水ハウスの潜在力は計り知れないものを持っている。ひとたび、田鍋時代のように社員一丸となれば、再び、首位奪還することは間違いないだろう。このことを期待して終わりにしたい。(文中敬称略)
野口孫子