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米ヤフー買収劇で正念場を迎えたソフトバンクの孫正義社長(下) | 東京レポート
特別取材
2008年3月 5日 11:03

ライバルはグーグル              

 「これからケータイこそがインターネット、アジアを制する者が世界を制する時代が来る」。決算発表の場で強調したこの発言が、孫氏のビジネスの方向を示している。インターネットの主戦場はパソコンからケータイ(携帯電話)に移った。ソフトバンクは「アジアとケータイネットのトップ企業」を目指すというわけだ。

 孫社長が、アジアとケータイ戦略の軸に置いているのが、ソフトバンクと中国最大のネット企業アリババ、米ヤフーの3社連合だ。アリババにはソフトバンクと米ヤフーが出資するほか、取締役に孫氏とヤン氏が名を連ねる。アリババのCEO馬雲氏をソフトバンク本体の取締役に迎え入れている。

 そのアジア戦略に立ち塞がったのがグーグルだ。グーグルは、有料で提供されるべきだと考えられていた記事やサービスに広告(検索連動型広告という)をつけることで、無料で提供する手法を編み出し、世界最大のネット広告会社にのし上がった。

 グーグルが検索連動型広告をはじめたのは2001年。検索するのは無料。消費者がとびつかないわけがなかった。あっという間に、検索ビジネスで先行している米ヤフーやMSに追いつき、追い越し、いまでは、大きく水をあけたのである。

 孫氏のケータイネット戦略の中核にいるのが、ソフトバンク携帯の検索を担う日本ヤフー。だが、グーグルはKDDI(au)に続きNTTドコモとも提携し、日本の携帯市場の約8割がグーグルの検索を使用することになった。国内検索市場でのシェアは日本ヤフーが優位だが、ケータイ市場をグーグルに奪われ、首位を保つのが危うくなった。孫氏のスタンスは反グーグルだ。


今後の命運がかかる再編劇

 ゲイツ氏も、携帯市場をグーグルに奪われるという危機感をもつ。MSが、ネット広告でグーグルに敗れた米ヤフーに買収をもちかけた理由だ。手を組んでグーグルに対抗しよういうわけである。グーグル対抗なら、ソフトバンクはMSと組むこともあり得る。

 しかし、3者の関係は反グーグルでまとまっているわけではない。米ヤフーのヤン氏は反MSだ。ヤン氏から「絶対的な支援を頼む」と要請を受けているが、孫氏には友情とビジネスは別。米ヤフーが日本ヤフー株を売却した場合やMSが米ヤフーを買収した場合などさまざまケースを想定して、自社にとってどちらが有利かを考える。

 「アジアを我々にまかせてもらえないか」。孫氏は水面下で、ゲイツ氏とマードック氏に打診しているという。アジアをソフトバンクとアリババをまかせてくれれば、そちらを支持するというメッセージだ。

 ところが、MSは、ソフトバンクが親会社の日本ヤフーが、ヤフーブランドを使用していることに疑問を抱いている。米ヤフーと日本ヤフーの資本関係は不自然だとみなしているのである。MSが米ヤフーを買収すれば、日本ヤフーとの資本関係の見直しを迫ってくるのは必至だろう。

 MSが引き起こした米ヤフー争奪戦。ソフトバンク=日本ヤフーは大波をかぶる。アジアとケータイネットのトップを目指す孫正義氏の正念場だ。


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