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航空機事業に進出するトヨタ 豊田家の不文律「一人一業」神話の呪縛(2) | 東京レポート
特別取材
2008年3月13日 09:40

三代目は住宅産業に進出           

 喜一郎氏の嫡男、章一郎氏が本家三代目として「一人一業」に取り組んだのが住宅である。戦後、都会は一面の焼け野原。「木や紙でつくった家ではダメだ」として、1950年にユタカプレコンを設立、丈夫で高品質なコンクリート住宅づくりに乗り出した。 

 そのため、トヨタに入るのは遅れた。章一郎氏の入社は、父親・喜一郎氏の死と、それに続く利三郎氏の死を待って、1952年、27歳のときだ。1975年、トヨタ自動車に住宅事業部を発足させ、住宅産業に進出した。トヨタホームである。

 しかし、住宅ビジネスは長い低迷が続いた。住宅は、工場で大量生産してシェアを一気に奪うことができる工業製品とはわけが違った。トップの積水ハウスでさえ全国シェアは1%台。地元に根付いた住宅会社が圧倒的に強い。トヨタ経営陣の頭痛の種は、章一郎氏が立ち上げた住宅事業であった。

 住宅事業の強化策が、ミサワホームのグループへの組み入れだ。住宅メーカーは、積水ハウスと大和ハウスが他を大きく引き離し2強時代。ミサワホームが3位で、トヨタホームは10位にも入っていなかった。トヨタがミサワホームホールディングスに出資したのは、ミサワホームとの共同化事業でトヨタホームを大手住宅メーカーに並ぶようにするためだ。「一人一業」を実のあるものにすべく、ミサワホームを手に入れたのが実情だった。

四代目は航空機事業か            

 さて、豊田家四代目の豊田章男氏。経営陣は御曹司の社長擁立に向けて動き出した。章男副社長に社長昇格試験が課せられた。昨年から担当した国内営業がそれだ。自動車生産世界一のトヨタのアキレス腱は国内市場。若年層のクルマ離れで、新車が売れない。最難関の国内販売を与えて、社長候補としての力量を試すことになった。

 トヨタの国内販売台数は1998年以降、170万台前後で横ばい傾向にあったが、2005年から減少に転じ、3年連続のダウン。当初、国内の販売目標は170万台への回復だったが、そのハードルは高いとして160万台に引き下げられた。低迷が続く国内営業に歯止めをかけたとき、登用試験は合格。晴れて、豊田家への大政奉還という段取りになる。

 章男氏のもう1つの課題が「一人一業」。曽祖父は自動織機、祖父は自動車、父は住宅を起業した。豊田家の嫡男として、次事業に一歩踏み出すことが責務なのだ。その意味で、経営陣が御曹司のために用意したのが航空機事業だったのではないか。

 「一人一業」--これぞ創業者精神の伝承という、いささか美談仕立ての神話。それが航空機事業に進出するトヨタの深層心理を呪縛していると読むことができる。


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