ツアー一行はCWARS職業訓練センターに向かった。2005年6月6日に着工し、同年10月18日に完成、カナダ・香港から資金提供を受けて運営されている施設である。センターでは主に、農業をはじめバイク修理(6カ月)、自転車修理(3カ月)、床屋(5カ月)、美容室(6カ月)、縫製(6カ月)、電化製品修理(1年)などの訓練が行なわれている。※( )内は訓練期間
ここではCMCのラジオ放送が行なわれており、絶望していた被害者が「自分でもできる仕事があるんだ」ということから入居につながるケースがある。また、CWARS側でも各州で宣伝活動を行なっている。
生徒数は06年の166名に対し、07年は99名(1人当たり年間550ドルの経費が必要)と減っていたが、今年2月現在では85名とかなり増えている。生徒は4つの州(バッタンバン・バンテンミェンチャイ・ポーサット・コンポントム)から来ており、おおむね地雷被害者が半分、ポリオ患者が半分という構成になっている。まだまだ地雷被害者・ポリオ患者に関しては予断を許さない状況である。
卒業後は、たとえば床屋であれば、いす、鏡、はさみなどの道具一式を、縫製であればミシン、糸、針などを無料で提供する。そして、CWARSのスタッフが市場調査をしたうえで仕事があるところに卒業生を直接現地へ連れて行くか、地元の村に帰って独立して仕事をするというかたちになる。ちなみに85~90%が独立し、できない人でも他の店に助っ人で行くなどの措置がとられる。
またここでは、ドメスティックバイオレンスなど家庭に問題がある者、地雷被害による精神的ダメージから、多量飲酒によってアルコール依存症になった者、障害者となり伴侶に逃げられた者など、精神障害者が入居するケースもある。こうした人たちには生きることを説得し、希望を取り戻してもらうようにしている。
途中でやめる人も1~2%いるが、それはアルコール依存症患者が酒をやめられず、自分の行為を恥じて自ら退去を申し出るというケースだという。
以上、今回のツアーの柱の1つである地雷撤去および被害(者)の現状について、8回にわたって見てきた。ここで伝えたかったことは、負の遺産「地雷」の撤去はいまだ終わりが見えず被害者を生み続ける一方で、様々な立場や国の人たちが地雷撤去や被害者救済に心血を注いでいるということ、そしてそれは「戦争」という過去の人間の愚かな行為で現代の人々にそのしわ寄せが来ているということである。
我々は、このことを「対岸の火事」として見てはいけない。いつ何時、自らが同じ状況に立たされるか、混沌とした今の世界情勢では計りしれない。被害を受けつつも一生懸命に活き活きと生き抜く姿、そして彼らを支援する人々の姿から学ぶことは多いと思う。
つづく
【大根田康介】
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