今回からカンボジアの子供たちに焦点を当て、学校に通う子供たちと、通えない子供たちの現状について、CMCが建設に携わったボップイ安部小学校と日本のNPO「国際人権ネットワーク」(代表・緒方由美子)が携わったモンドルバイ希望小学校を例に見ていきたい。
まず、現在のカンボジアの教育について整理しておく必要があるだろう。基本的には日本と同じで、義務教育は9年間で、小学校6年、中学校3年と定められている。数え方は、小学校までが6年生で、中学校は7~9年生、高校は10~12年生となる。
進学率は全国で小学校が91.9%だが、中学校になると26.1%と極端に落ちる。バッタンバン州の過疎地域になると、小学校82.5%、中学校3.9%と、ほとんど中学校に進学できていない。そもそも中学校自体がカンボジアに少ないことと、この歳になると家計を支えるために働く子供たちが増えるからである。そのためCMCでは今年3月に、バンテアイミェンチャイ州コーントライ村での中学校建設に着手している(9月に落成予定)。
教育省配布の教科書や指導要領もあり、教育制度自体にはあまり問題ないが、それが実践されていないのが現状である。経済的理由もさることながら、両親がおらず、孤児となる子供も後を絶たないため、学校を建てても人がおらず幽霊屋敷のようになるところも出てくるという。
また、特に国立の場合は教師の給料が安い(公務員は月30ドル)ため、教師が子供たちからお金を徴収するようになり、義務教育は原則無料にもかかわらず、子供が学校に行けなくなるケースも多いようだ。たとえば、ある小学2年生は1日500リエルを教師に払う。1クラス40人だから20000リエル=5ドル、1カ月で100ドル。そのほかにも寄付を集めるお祭りや結婚式、葬式などで年間10回程度の臨時収入を得るという。また、教師が市場で仕入れた菓子を子供たちに売りつけて収入を得、買わなければ出席や進級にひびくということもあるらしい。私立に通うことのできる裕福で能力のある子供が増える一方、無料のはずの国立に通い、かえって教師から悪影響を受ける子供がいる、というのがカンボジアの教育の現状である。
つづく
【大根田康介】
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