魚食の普及に情熱を傾ける 消費者のニーズに応えて食卓に魚料理を
業界トップ続ける原動力・「明市場」のDNA
アキラ水産は水産物仲卸のトップ企業だ。屋号は安部社長の伯父・明氏より継いだものだ。安部社長は「産地直送」・「薄利多売」・「幅広い品揃え」に力を注ぎ、アキラ水産を現在の位置に押し上げた。こうした考えはいずれも明氏から引き継いだものだ。明氏は大正の中頃から昭和16年まで現在の柳橋連合市場がある場所で「明市場」を父・栄次郎氏、弟で安部社長の父でもある篤助氏と3人体制で営み、消費者から絶大な支持を受けた。従業員は約200人という大所帯で、品揃えは鮮魚に加えて、乾物、青果、米、履物、呉服までおよび「明百貨店」と称した。その繁栄ぶりは消費者の利益を考え続けた明氏の思いに支えられたものなのだ。
安部社長は、時代とともに明氏の理念を実現し続けてきた。かつては、高い鮮度の商品が求められた。そのためには魚介類をそのままの形での出荷するのが当たり前だった。魚を含めて料理に時間を割ける人が減ってきた。内臓の除去から始めた鮮魚の加工は、今では完全にパック化してしまう3次加工まで行っている。また、消費者の「安全安心」は至上命題と考えISO9001の認証を取得した。自治体の影響力の強かった魚市場においてその庇護に安住することなく積極的に外に打って出る姿勢が、鮮魚の消費低迷が言われだして久しい中でもアキラ水産が業績を伸ばし続けている礎になっている。
業界への愛着と人づきあい
安部社長は「アキラ水産だけが生き残っても仕方がない。業界全体が反映しなくては」と愛着深い業界全体への心配を正直に語る。業界全体の浮上を目指して安部氏が副会長を務める全水連(全国水産物卸組合連合会)は、06年に毎月月10日を魚(トト)の日と定め、その浸透に力を注いでいる。イベントなどを通して、特に若年層の魚食離れを食い止め、魚食を復活させようと云う試みだ。このトトの日のポスターとなった原画の制作は代々・魚河岸と縁が深い歌舞伎役者12代目市川団十郎さんが手掛けた。鯛をモチーフに1ヶ月をかけて描かれたもので、魚料理復活に勢いをつける力みなぎる作品だ。
「私たちは仲卸という立場ながら、消費者の意見をいかに反映していくかが生き残りのかぎ。食育も業界にとっては大きな課題となっている。」と子供たちの「食」の在り方についても心配し食育についてもいまから業界で取り組んでいこうとしている。
07年5月の子息の結婚披露宴には、地場はもちろん全国から約450名の政財界の要人が駆けつけた。水産業会だけでなく、食品、スーパー、建設など各業界のトップが顔をそろえた。その顔ぶれは損得抜きで人との付き合いを大事にしてきた安部社長の人徳からくるものだ。損得勘定ぬき、自分の所だけが良くても駄目、そんな気風の魚屋さんに並ぶ魚は威勢も良さそうだ。アキラ水産の今日は、そんな安部社長の気風ゆえと言っても過言ではない。
[プロフィール]
安部泰宏(あべ やすひろ)
1939年3月29日福岡市生まれ
全国水産物卸組合連合会副会長、
九州地区水産物卸連合会会長、
福岡市鮮魚仲卸協同組合理事長
会社住所:福岡市中央区長浜3丁目11-3-711
電話:092-711-6601
URL:http://akirasuisan.com
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