建設業界に忍び寄る鉄鋼価格の大幅引き上げ
落ち着きつつあった鉄鋼価格がここに来て暴騰している。原因は鉄鉱石の大幅値上にある。値上を仕組んだのは鉄鉱石採掘会社。鉄鉱石は寡占化が進み世界の生産量の72.0%を次の3社で占めている。ブラジルの「CVRD」、オーストラリアの「リオ・ティント」と「BHPビリトン」社で、計4億84百万トン(世界の鉄鉱石生産量が6億73百万トン)生産。ところがこの3社、需要が旺盛なことから大幅な値上を実施したのである(年契約、新日鐵は昨年契約単価より65%UP、今4月より輸入分に適用)。
物が入らなければ需要に応えられないという需要側の事情で、鉄鋼大手は供給元である鉄鉱石メーカーの値上げを飲んだのである。(過去、中国需要急拡大により世界的な鉄鋼価格が上昇、その過程で需要者側である建設や自動車、機械メーカーなどに対し、鉄鋼会社が世界価格を根拠に値上を実施、暴利をむさぼった経緯がある)
当然、鉄鋼の原料である鉄鉱石の値上げは、基幹産業である鉄鋼の価格に直接影響する。
建設業界では、4月より鉄骨・鉄筋の値上がりが始まることになろう。新日鐵によると「現在個別企業ごとに交渉中である。」としているものの、販売会社が系列化されており4月値上げは必死である。当然すでに相場は先行取得のため値上がり傾向が続いている。
建設業界は、基準法改正で新築物件が減少しており、通常なら値下がるものであるが、鉄鋼の世界的な値上げの動きから、スクラップ価格がHS56,000円/トン(韓国企業の買付価格3/25現在)と大幅に上昇しており、昨年7万円強で推移していた相場が、4月以降10万円から11万円になると言う鉄鋼関係者もいることから、はっきりするまで販社もいくらで出したらよいか皆目見当の付かない状態である。大手鉄鋼メーカーは、政策的に好況の造船と自動車産業向けにシフトしており、建設業界は後回し状態で、電炉メーカーも価格設定できない状態となっている。
当然一番儲かっているのはスクラップ業者、電炉メーカーに売却せず、山に大量に保管しているという話もあるほど。
スクラップの場合、現行5.5万円+メーカー製造費用2.5~3万円+販売経費2万円
以上から、10万円~11万円の動きとなる(H鋼は電炉製品が多い)。
しかし日本国内の景気は、海外組も円高で輸出競争力をなくし、牽引していた不動産業界もサブプライムローン問題で海外投資ファンドの引き上げによりジリ貧状態、政治も経済も泥沼化している。こうした状況下での値上げは、スタフグレーションそのものの様相を見せることになる。各鉄鋼メーカーは可能な限り上昇幅を抑えてもらいたいものである。
その他
※鉄鉱石は極めて生産会社の寡占化が進んでおり、銅などのように取引所もなく、決してハゲタカ投機筋によるものではない。
※サブプライムローンで傷ついたハゲタカは一挙に損失を取り戻すため、原油に殺到して暴騰させ、見返りにも穀物(エタノール用トウモロコシなど)を投機対象としている。これがある程度落ち着いたら、次は銅やレアメタルを動かしてくるのは必死である。
銅価格 = 2003年2000ドル ⇒ 2007年8800ドル/トン 4倍強上昇
※鉄鉱石が値上がれば、鉄鋼生産に必要な石炭価格も当然上がる。
生産量も追い討ちがかかっている。オーストラリアの大手産炭施設が水没してしまい、復帰には2012年までかかる。中国雪害で生産中止、南アフリカの生産施設に対する電力不足、ロシアの炭鉱事故続発。・・・空調機器⇒管工事代に影響。原料炭は2~3倍になる予想も出されている。
世界の鉄鉱石生産量
(億トン) |
|
CVRD(ブラジル) |
2.16 |
リオ・ティント(豪) |
1.54 |
BHTビリトン(豪) |
1.14 |
その他 |
1.89 |
世界の生産量計 |
6.73 |
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