最後に、博多区の課題と展望についてお聞かせ下さい。
遠藤:
区政運営の基本にあるのは住民の安心安全です。
もう一つは、九州新幹線全線開通など、都市としての発展要因もありますが、その中で、どう住民の皆さんと一緒に「博多らしさ」を保っていくかが最大の課題ですね。
昭和50年に東海道新幹線が博多まで開通しましたが、その時の国鉄のキャッチフレーズをご存じですか。「ひかりは西へ」だったのです。東京の文化が新幹線に乗って博多に来るぞ、という意味が込められています。しかし、「そうじゃなかろうもん」と思っています。
聖福寺は「扶桑最初禅窟」の名の通り、わが国初の禅寺だし、東長寺は、弘法大師空海が帰朝して、東に密教が伝わるようにと創建した日本最古の密教霊場です。
大陸文化の光は、「博多から東へ」伝わっていたのです。
九州新幹線でいよいよ東京-鹿児島が繋がりますが、博多には、これまで以上に東から南からいろんな人や文化が押し寄せてくると思います。そういったものに押し流されずに、逆に「博多らしさ」を送り出すようにできればいいですね。
どうもありがとうございました。
(編集・構成:日下部晃志)
<編集後記>
九州新幹線開通を控えて、博多区は大きく変わりつつある。人口や企業のオフィスも増えるし、ホテルや商業施設もどんどん増えている。一見すれば博多の未来は明るい。しかし、新幹線は「諸刃の剣」でもある。「どうせ福岡に一極集中するくさ」と呑気に構えていたら、熊本や鹿児島に観光客を持って行かれる可能性だってある。そうならぬように「博多らしさを保つことが大事」だと遠藤区長は強調する。
山笠だけでなく、博多ラーメンだけでなく、「これぞ博多」という街のあり方そのものを見直すいい機会だ。ホテルやオフィスの林立は、都市機能の発展ではあっても、「博多の街」の発展とは必ずしもいえないのだ。
「ひかりは西へ」の逆を行く発想、足下の掘り起こしが必要だ。活用できる「お宝」はいくらでもある。あとは、行政、企業、住民がどれだけ知恵を持ち合うか、ではないだろうか。
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