政府の道州制ビジョン懇談会(座長・江口克彦PHP総合研究所社長)は24日、道州制導入に向けた基本的な考え方などを盛り込んだ中間報告をまとめ、増田寛也総務相(道州制担当相)に提出した。
中間報告では、現在の中央集権体制、東京一極集中が「国全体の活力、国力を大きく低下させた」として、各地域がさまざまなことを独自に決定できる地域主権型道州制への転換を提言。
国家の統治機構を「国」「道州」「基礎自治体」の3層制とし、国の役割を外交や安全保障、通商政策などの16項目に限定したうえに、道州は、広域の公共事業、大学以上の高等教育、産業振興、雇用対策、電波管理などを分担する、とした。
また、中央集権体制から分権型国家への転換などを掲げ、「おおむね10年後、2018年までに道州制に完全移行すべきである」と具体的なスケジュールにまで踏み込んだのが特徴となっている。
しかし、この報告に対する福田首相の反応はきわめて残念なものだ。「将来のビジョンとして出されるということだから、それはそれでいい」と述べ、同時に「地方分権をまず進めなければ道州制も実現しない」と指摘したが、これは誤りである。地方分権を進めれば、道州制に行き着くなどという方法論の問題ではない。
首相はのこの発言からは、道州制導入に向けての熱意は感じられないし、道州制ビジョン懇談会(以下「懇談会」)が持っているような「危機感」ともかけはなれている。まあ、「道州制にすれば効率的だよね」程度の認識である。
確かに、道州制の最大の目的は、「政治・行政の生産性」を高めることにある。しかし、時間がないのである。課税自主権や立法権を持った「地域主権型道州制」を早期に実現しなければ、日本が持たないのである。
統治機構を大胆に改編するのは、明治4年の廃藩置県以来のことになる。廃藩置県は「集権化」の作用だったが、今回は全く逆の「分権化」作用になる。
しかし、それを進めようとする人間の動機は共通している。それは「日本が危ない」からだ。廃藩置県によって中央集権国家を作らねば、欧米列強に侵食されてしまうのではないか、というのが当時の危機感だった。
今回は、国・地方を合わせて1000兆を超える借金がある日本、とにかく国が何とかしてくれるという「依存体質」に慣れきって、「創造性」の働くなっている日本に対する危機感が報告書を読めば伝わってくるというものだ。
だが、残念ながら、今、日本の戴く宰相にはその「危機感」がない。「日本」よりも「国民」よりも自らが主宰する「政権」が大事な人間にはそれがわからない。
「危機感」の乏しい人間は、この報告書が「区割り」について言及していない、などと言っているが、そんなことは後回しでもいいのだ。「地域主権型道州制」は単なる「地方分権の仕上げ」(増田寛也総務相)ではない。
日本の危機を救うための新しい「国産み」なのだ。その「機運」を高めることこそが、今は大事なのである。
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