女として画家として
私の作家活動に常につきまとっていたもの。それは、画家であり、女であることです。今でこそ子育ても一段落し、創作活動に没頭していますが、しかし駆け出しの頃、周囲の人々に主婦(嫁)が画家であることを理解してもらうのは、容易なことではありませんでした。
大学卒業後すぐに結婚した夫が大変な理解を示してくれたこともあって、私は制作に打ち込みました。妻と嫁と画家のすべてを、そつなくこなすことがその条件でした。大学で美術部に所属していたものの、美大を出たわけではない私は、「美大出に負けられない」という一心で、歯を食いしばりました。忙しい毎日でした。
そんな中で全国公募のコンクール(現代日本美術展など)に入選したり、日韓(韓日)現代美術展に出品したり、個展をしたりと、活動の場を広げていきました。
ところが1990年、一番の理解者であり、頼りにしていた夫が他界、その2ヶ月前に長男(小学1年)の交通事故という絶望に苛まれました。幸い長男は無事でしたが、しかし同時に、幼稚園児の次男、二歳だった長女の三人の子育てという現実が待っていました。「生きているのがやっと」といった超多忙な生活のなかで、私は、作家活動を休止するしかありませんでした。それから、画家として、〝空白の十年〟を過ごしたのです。
ところが2000年に、地元中学から美術部で指導してもらえないかという話が舞い込み、引き受けることにしました。私はやるからにはと一生懸命取り組みました。すると殆どの生徒がコンクールで賞を取り、喜ぶ姿を目の当たりにすることができたのです。
その翌年、〝温めていた夢〟でもあった「子どもから大人まで自由な創作の場を提供するアートスクール」をオープンさせました。そのために、色彩心理と育児アドバイスのノウハウも大阪まで研修しに行きました。
今後は自分自身の制作にも力を入れていきたいと思っています。今年は東京(銀座)と福岡市美術館特別展示室での個展を実現させることができました。絵と映像、具象と抽象、東洋と西洋など対比する概念の融合ということをテーマにしています。やはり日本人ですので、和紙や墨といった素材も魅力的です。
福岡は熱い街です。博多っ子である私はその元気さの一員でありながら、作品に接する人たちに元気になってもらえたら、少しでも感動を与える存在であれたらと思っています。
[プロフィール]
さかいようこ
1957年福岡市生まれ。76年福岡高校卒業。80年福岡女子大学卒。82現代日本絵画展(宇部)入選。84年北九州ビエンナーレ展入選。同年TNCビデオコンテスト大賞。85年第17回現代日本美術展入選(東京ビエンナーレ)。同年より日韓(韓日)現代美術展に出品(第5回~第10回)。01年「アートスタジオ海の中道」開設。04年青木繁記念大賞展入選。05年生光展最優秀賞(東京銀座)。06年第39回西日本美術展優秀賞。
アトリエ:福岡市東区奈多1-11-18-101
tel:092-605-0303
URL:http://www.apple.fm/~sands/
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