スクラップ価格急上昇
電炉メーカーの材料となる鉄スクラップ市場では、毎週値上がるという異常事態となっている。日本には、中国・韓国からの買い付けもあり、製品価格がどこまで上がるのか見当が付かない状況になっているのだ。
新日鐵では
「鉄鋼商品に関しては納品先と個別に交渉しており、4月からの値上については各社事情が異なるので申し上げられない」
としているが、高炉も電炉メーカーも価格上昇率があまりにも高く、具体的な交渉が進んでいないことを滲ませている。そのため鉄鋼商社は、膨大な赤字になる可能性を懸念し、メーカー系・独立系とも、ゼネコンや鉄骨工事会社に対して見積もり提出出来ない状況になっている。
10万円台に突入か
前回試算したとおり、スクラップ価格が56,000円/t(HSクラス、3/25取引値)。電炉メーカーの製造コスト25,000~30,000円と営業・物流コスト20,000円を加算すれば、101,000~106,000円になる。これまで80,000円前後で推移していた鉄鋼価格からすれば、20%~30%の値上がりである。
経済が好調な中国に続き、インドや資源大国化したブラジル・ロシアなどの新興勢力が鉄鋼需要を増大させる限り、原料の鉄鉱石価格は2009年度も上昇するものと思われる。
しかし国内鉄鋼業界には、今回の値上の浸透がうまくいかなくても、輸出にまわせばその方が儲かるという算段と、需要者側は普通鋼は海外から輸入できるが、熱延鋼・冷延鋼など技術鋼は日本製にはかなわない、という思惑もある。
鉄鋼大手各社はこれまでも巨額の利益を出しているが、海外の大口需要者側は円高で輸出が不振に陥る可能性が高く、これまでの利益を吐き出してでも販売してくるのでは、という思惑で交渉に当たっているようだ。
日本の景気も海外依存率が極めて高い食料・原油・鉄鉱石等メタル資源の価格決定権を多国籍企業に握られ、風前の灯火か。アメリカ投機資本主義に盲目的に追随した結果である。
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