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「渡辺博史」「黒田東彦」の名前が急浮上 日銀新総裁はやっぱり財務省OBか? | 政界インサイドレポート
特別取材
2008年3月14日 13:43

 日銀総裁人事をめぐる自民党と民主党の不毛なチキンゲームに決着がつきそうだ。
 首相官邸や自民党執行部は一時、「参院不同意のまま強引に武藤敏郎・副総裁を総裁に任命し、野党が憲法違反と主張すれば裁判で戦えばいい」という強硬論が台頭し、衆院法制局にも検討させた。しかし、さすがに「泥仕合を長引かせてはガソリン税問題まで収拾つかなくなる」(自民党役員経験者)との判断で候補を差し替えて再提案する方向だ。事実上の”白旗”である。
 実は、民主党は参院の採決前から、「渡辺博史・前財務官なら反対しない」と、別の総裁候補を内々に逆提案していた。渡辺氏は武藤氏と同じ財務省OBながら、次官経験者ではなく、国際金融局長→財務官を経験した金融のプロだ。
 ただし、政府内には、「58歳の渡辺氏では若すぎる」と、同じ財務官経験者でも年次が上の黒田東彦・アジア開発銀行総裁を推す声も強い。その場合、国際機関のトップを任期途中で交代させなければならないため、「後任を日本から出せるかが問題」(財務省幹部)と、役所側はどこまでも天下りポスト維持しか頭にないようだ。


司令塔不在の福田官邸

 それにしても、世界から笑われた今回の総裁人事の迷走劇は、ねじれ国会の中での福田首相と自民党執行部の当事者能力の欠如を露呈した。民主党が早くから「武藤ノー」のサインを出していたにもかかわらず、福田首相、町村信孝・官房長官、伊吹文明・幹事長ら政府・与党首脳は口を揃えて、「武藤氏はベストの人選」とチキンゲームに突き進んだ。
「本当にゲームに勝てると思っていたからだ。総理のお気に入りで財務省出身の林信光・秘書官が最後まで『民主党は絶対に折れてきます』と言い続け、3人ともそれを信じた」(官邸スタッフ)
 役人のミスリードは今に始まったことではないもの、より問題なのは、官邸も執行部にも、民主党の動向についての情報収集能力が全くなかったことだ。
「司令塔がいない。福田、町村、伊吹は事務的な用件以外、互いに口もきかないし、国会対策の指示を出す対場の伊吹にもその周囲にも、民主党にパイプがまるでない」(国対幹部)
 これでは役人の情報に頼らざるを得なかったわけだ。
その結果、福田内閣は深いダメージを負ったが、それ以上に深刻なのは、サブプライム問題で国際金融不安が高まっている中で、日本の金融行政の人材不足が著しいことだろう。福田首相が「ベスト」と語った武藤氏にしても、先輩に当たる財務省OBにいわせると、
「武藤は財務省でも二番手か三番手だったが、ライバルが接待スキャンダルで失脚したから次官になることができた。国会対策で政治家に取り入ることはうまいが、金融はシロウト同然。国際的知名度もなく、英語も話せない国内派官僚だ」。
 その程度の人物のために1週間の国会空転を招いたことが、世界の金融市場から笑われている真の理由だろう。

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