4月24日の株主総会で正式な役員人事が決定する。この人事で積水ハウスの改革の意気込みの程度がわかるだろう。積水ハウスは昭和49年(1974)から平成17年(2005)まで、31年に亘り業界トップの座を維持してきた。プレハブ住宅産業50年の歴史の中で、大半トップを維持してきたわけだが、遂に大和ハウスにその座を譲り渡した。しかし、トップを譲ったとはいえ、積水ハウスはまだ王者の風格を失ってはいない。
事実上の創業者と言われる、元社長・田鍋健がこの会社に植えつけた哲学「人間愛」が、社員の隅々まで生きている。お客様を大事に、お客様に奉仕し、工事に携わる職人を大切に、高品質の住宅、住環境を提供しようとする、良き伝統が受け継がれている。このようなことが今でも積水ハウスの信用の高さとして評価されている。しかしながら、住宅を取り巻く環境は大きく変ってしまった。現在着工数は、少子化や不況の長期化などの原因から、100万戸を少し越える程度まで落ち込んでいるが、今後100万戸を割り込む日も近いのではないか。冷え込んでいる住宅市場の中、拡販を図ることは従来の営業戦略では対応できない。“新しい風”をどうつかむかが重要である。この風をいち早くつかみ、次の発展につなげなければならない。そのためには「改革」である。過去の栄光、成功体験では絶対につかめないだろう。今回の役員人事で、改革の意思があるのかが、見極められるのではないだろうか。改革は「言うは易しい、行うは難し」。トップ社長の決断にかかる。
現代は予測不能、不確実で何が起こるかわからない。今、トップに要求されるのは、公平無私な姿勢と、10年先、20年先を見越した事業の構築(開発事業はその良き例)であろう。過去の栄光にすがり、旧態依然たる権威主義にすがるなら、優秀な社員の能力も錆び付き、やがて衰退の道をたどることだろう。 現に、第二位に転落したことは、その兆候と捉えるべきではないだろうか。積水ハウスが大和ハウスに負けるわけがないのに、負けている事実は真摯に受け止めるべきではないだろうか。社員の能力、営業力、商品力、協力工事店を含めた組織力、「人間愛」を根本哲学に据えて事業を展開、実践している積水ハウスなら後塵を拝するわけがない。なんの遜色があろうか。問題点はトップを含めた組織、人事にあるのではないだろうか。素直に、問題点を洗い出し、改革に着手すべき時に来ているように思う。
野口孫子
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