VCAOスクール※では、社会的弱者である、ゴミ山で働く子供たち(Vulnerable Child Garbage Workers)の社会的自立を支援する施設である。1997年に設立され、ソー・ソパラ校長を始めスタッフが9名(うちNGOからが3名、ボランティアが6名)で運営されている。
※Vulnerable Childrens Assistance Organization、1994年設立のカンボジアのNGO団体
この施設には、ゴミ山付近に住む4~18歳までの159名が通っており、ゴミ山で働く子供たちのほか、プノンペンでゴミを拾って生活している孤児たちも通っている。家庭の事情や労働時間などによって登校時間が不規則であるため、10~30名くらいの変動制のクラスとなっている。
あるボランティアのダンスの先生(大学生)は、「子供たちに伝統であるアプサラダンスを伝えたい。また、ゴミ山で働く子供たちの状態を知りたい」という思いから、ここで子供たちを教えているという。
現在は読み書きやダンスなどを教えているが、以前は床屋・美容院・仕立ての職業訓練も行なっていた。しかし、1997年から続いたドイツからの支援が2006年で切れて運営が苦しくなり、この3つの訓練を中止した。ゴミ山の閉鎖・移転の話も以前からあり、今後の運営が課題となっている。
ソー・ソパラ校長は「本当は15~20歳くらいまで職業訓練をさせたいが、今は新しい支援者も見つからず、資金が苦しくてなかなかできません。生活が確保できる支援がほしいです」と、厳しい表情で語る。支援契約は通常1~2年で、期限が切れたらそれまでである。そのため、定期的なスポンサー探しが必要であるが、なかなか支援してくれるところがないようだ。
カンボジアは生活インフラすら整っていない環境であるから、教育に注力する余力がない。それでも、都会の裕福な子供たちは高校・大学まで行けるのだから、同じ都市圏で大きな教育格差が生じているのが現状である。
教育格差は性教育にも及び、カンボジアでは今、HIV/AIDSの蔓延が社会問題となっている。罪の無い子供たちが危険にさらされているのだ。また、生活に困窮した子供たちが罪を犯すことも十分ありうるのである。
カンボジアの子供たちは第三者の力によって支えていかなければならない。希望に満ちた子供の瞳の輝きを守るために―。
つづく
【大根田康介】
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