今回ガイドをしてくれたプノンペン在住のブティさんは、「子供が2人いるが、給料は月380ドルで生活には困らない。ただ、プノンペンは物価が高く、家賃が部屋2つで60ドル、娘の私立学校の学費が年間345ドル、塾が月20ドル、車の送り迎えが月15ドル、食費が月250ドル、扇風機と炊飯器を使うくらいでも電気代が月30~40ドル、水道代が月10ドル、そのほかに交際費が月20ドルかかる。そのため、ほとんど手元に残らない」と語る。
彼の所得は高い方だが、たとえば国家公務員の給料は月30ドル。そのため、英語・中国語・韓国語のガイドや民間の旅行会社、ホテルのベルボーイなどのアルバイトで生計を立てており、上司も黙認している状態だそうだ。
現在、カンボジアの国民総所得は年間約380ドルで、日本の10分の1以下。また、国民の10人のうち4人が、1日1ドル以下の生活を送る貧困層だと言われている。炎天下のなか、ゴミ山で働く人々は、朝から晩まで異臭漂う地で、巨大なブルドーザーやトラックが行きかうような常に命の危険を伴うゴミの分別を行なっても、1日1ドルにも満たない稼ぎである。
また、それだけのゴミは、一部の富裕層や観光客によってもたらされる。日本で年配の人にゴミ山の映像を見てもらったところ、「私たちのころはたしかに貧しかったが、これほどゴミもなかった。経済格差がこのゴミとそこで働く人々を生み出しているのだろう」と言っていた。まさにその通りだと思う。
また、以前述べたように農民にしても、貧困であるがゆえに地雷原であろうが農地を求めて被害に遭う。どの国でも同じなのかもしれないが、生活が苦しければ苦しいほど、生きるために生命を賭けなければならないという矛盾がある。それがカンボジアでは国民の40%、なかでもとくに女性や子供、地雷被害者が多いというのが現状である。
つづく
【大根田康介】
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