3月の日銀短観によれば、企業の景況観は大幅な悪化を示し、景気は後退局面に入っていると思われる。日本経済は正念場にさしかかっている。一方アメリカも、3月の雇用統計で就業者数が5年ぶりに大幅な減少となったことがわかり、景気後退が一段と現実味をおびてきた。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長も強い懸念を示している。この雇用悪化を背景に、米産業界では人員削減が進んでおり、通信大手のモトローラ社は2600人のリストラを発表。小売り売上高や新築戸建住宅の低迷、と個人消費を冷え込ませる負の連鎖が始まっている。
オリンピックに沸く中国にも異変が起きはじめている。上海株式市場では昨年10月からたった半年で、株価が半分近くまで下落している。加熱ぎみの景気を冷やすために中国政府がとった、インフレを抑制する経済政策の効果が出ているためだ。かつて日本で、不動産向けの融資の総量規制と利上げをやり、バブル崩壊を招いたことと類似している。中国も新たな世界経済への火種になり、不安定要因となっている。
日本では3月末に地価公示が公表された。全国統計では上昇しているが、今まで大都市を中心に値上がりし続けていたのが、昨年後半から減速し始めている。 日本の土地を買いあさっていた外国の投資ファンドが売り姿勢に転じたためと言われている。米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的な不動産価格の下落が日本にも及んできた。今年に入ってそれが加速しており、東京の一等地で、これまでの最高値を下回る価格で取引されている事例が増えている。不動産価格の潮目が変わってきていると考えねばならない。
しかし、このように経済が大きく変動しつつある中、積水ハウスは東京の一等地に大型開発を3年後に立ち上げる事業を推進している。来年、再来年は開発事業が寄与する案件がないため、減収、減益になる。3年後は大型開発事業が寄与し、最終利益16%増、700億円とすると発表している。
世界は、日本経済は、暗雲が立ち込め、すでに一等地が値下がり始めている中、3年後、大幅な値下がりがあるかもしれない。 仕込み時点の高い土地代との乖離で、大型開発事業が根底から崩れるかもしれない。日本だけが世界の「蚊帳の外」という訳にはいかないだろう。大型不動産用土地を有してる積水ハウスも、思惑どおりに事業が推進できればいいのだが 不動産の潮目が変わった今、不測の事態に備え、細心の注意を払う必要があろう。
野口孫子
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