昨年秋、サブプライムローン問題の発生を機に世界の株価が一斉に暴落、それに追随して積水ハウスの株も大幅下落し、一時は1900円越えしていた株価も、現在はほぼ半値の900円台にまで落ち込んでいる。中国の上海株と同じだ。日本株式や住宅事業に対する投資の魅力がなくなったために住宅株全体が値下がりしているなか、積水ハウスがこれからの2年間は減収、減益と発表したため、投資の魅力がなくなったと市場は判断したのだろう。半年の間についに半値まで値下がりした。
経営陣は新会長、新社長の人事を発表したが市場は反応せず、株価は値下がり続け、一時700円台まで下がった。現在は900円台まで戻しているが、半値の域は脱していない。こうした状況下、積水ハウスは目新しい改革策も発表していない。
3年後、今仕込んでいる大型開発事業が大きく寄与し、中期経営計画では、2011年に利益700億を達成すると発表したが、市場はまったく反応しなかった。前号で述べたが、大型開発事業にも暗運が立ちこめはじめている。過去の成功体験は全く通用しない時代である。安易な希望的観測は経営の根幹を揺さぶりかねない。すでに投資マネーは不動産離れをし始めている。昨年前半は東京の1億円以上の超高級マンションが飛ぶように売れていた。しかし昨年夏以降、殺到していた外資の動きがピタリと止まり、消費者も土地の値下がりを見越してマンション購入に慎重になっている。地価の先行きの不透明感の拡がり、減速の予兆が随所に現れ始めているのは確かで、このような経済情勢の変化に、積水ハウスの経営者はどのように対処しようとするのか。
今までのように、いい土地を仕入れ、いい企画、いい環境の街並み、ビルマンション、の提案をすれば、富裕層向けに飛ぶように売れた時代は過ぎ去ろうとしている。ここに至っては積水ハウスの3年先の中期計画も万全とはいえないのではないだろうか。 もちろん、資金力にものを言わせ大型開発事業は継続しなければならない。しかし大型開発は、事業としての魅力的な土地の仕入れなど、確保するのに波が伴う。安定的な仕入れは難しい。だから、今回のように、2年後にしか寄与できず、 それまでは減益となってしまう。
田鍋の言うように、本業は工場生産材による住宅の販売である。全国六ヶ所に近代的な工場を抱えている積水ハウスは、高品質の住宅を提供できるはずである。 一度創業の原点に戻り、営業の建て直しを図るべきと思う。大型開発事業はプラスアルファーと捉えるべきだろう。
野口孫子 (敬称略)
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