世界は早いペースで世代交代が進んでいる。アメリカでは大統領選挙が、今年秋に行われる。黒人初の大統領候補として、オバマが一歩リードしている。オバマは1961年生まれ47歳、対抗のヒラリークリントンは６0歳。イギリスはブラウン首相が56歳、フランスのサルコジ大統領が52歳、ロシアは次期大統領メドベージェフが４０代、中国の胡錦涛主席６４歳は次を見据え、指導部を大幅に若返らせた。そんななか日本は、安倍首相５３歳をつぶして、福田首相７１歳を据えたことで、再び老害が始まった。

各国の若い指導者がサミットで集まったとき、彼らは自分より１０も２０も年上の老人を相手にするだろうか。日本の指導者は若い指導者の考え方、話題には合わず、国際社会の檜舞台では活躍できないのではないだろうか。また、世界の政治家と伍していくには「若さ」だけではない。学歴のハードルが待っている。アメリカの歴代の政権を動かしているのはＨＹＰＳと言われる超有名大学出身のエリート達だ。ＨＹＰＳとはハーバード大、イエール大、プリンストン大、スタンフォード大である。

ニューズウイーク紙の世界の大学ランキングによると、１位ハーバード大、２位イエール大、３位はプリンストン大であった。東大は２０位、京都大は２２位。アメリカのエリート人脈を例に挙げると、ブッシュ大統領はイエール大、ハーバード大学院。ライス国務長官はデンバー大を１９歳で卒業、スタンフォード大教授。クリントン前大統領はイエール大。次期大統領候補のヒラリーはイエール大。オバマはハーバード大。このように日本の指導者が彼らと同等に渡り合えるには、それなりのバックグランド（実力 と学歴）を備えていなければ、相手にされないのである。

「国家の品格」という本の中にもあったが、国民は永遠に成熟しない。ヒトラーの登場もワイマール憲法 のもと、画期的な議会制民主主義の下での、合法的な選挙で政権をとったのであった。 ドイツが国際連盟脱退時に、国民の支持率が９５％だったのは事実である。日本も、民主国家ではあったが、満州事変から太平洋戦争までのあいだは、朝日新聞を殆どの国民が支持した。アメリカでの大統領の支持率は、イラク開戦時７６％、二年半後には３９％、今や圧倒的に反対だろう。国民の総意はこの程度なのだ。だから民主主義の暴走を抑制するためにエリートが必要なのである。真のエリートの要件として、

１、文学、哲学、歴史、芸術、科学など、何の役にも立たないような教養をたっぷり身につけていること。　庶民とは比較にならない圧倒的な大局観と総合的な判断力を備えていること。

２、いざとなれば、国家、国民のために、喜んで命を捨てる気概があること。

このようなエリートは日本にはいなくなっている。先に述べたようにアメリカ、イギリス、フランスなどではエリートを養成している。 イギリスはケンブリッジ、オックスフォード大学で、フランスでは大学より格上のグランゼコールで。ここは真のエリートを輩出している。彼らに賄賂、汚職の話は一切ない。国民のため命をささげるエリートは、国民を欺くことをしない。（しかしながら、余談として、女性問題のスキャンダルは、どんな教育をしてもなくならないようだ。）

日本に目を向けると、国際舞台で脚光を浴びる政治家は輩出していない。東大は官僚養成大学で、官僚のコピーみたいな政治家ばかりだ。英語も話せないローカル政治家や年寄りの政治家が我が物顔で意味不明なことをしゃべっている。世界はグローバル化が進み、大きく変化しているのに、何の対策も立てずにいるのが現実である。

積水ハウスではどうだろう。今の社長以下、役員幹部がエリートの要件を満たしているだろうか。不動産、住宅など経済の変革の兆候が現れ、時代の新しい風が吹き始めているにもかかわらず、積水ハウスのため、社員のため、体を張って必死に危機を乗り越える対策を論じ合っているだろうか。「お前達、やっておけ!あとで報告せよ！」と社員任せにしていないだろうか。今幹部に必要なのは、社員の先頭に立ち、必死の形相でこの困難に立ち向かう姿勢であろう。威張っていては、下役は顔色を見るばかりで「ふり」をされ、空回りするばかりだろう。本気になりやる気を見せればその姿を見て社員はついていくものだ。

野口孫子　　　　　（敬称略）

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