20世紀は石油の世紀、キリスト教の世紀と呼ばれている。石油は20世紀になり、自動車、航空機等の輸送用燃料に使われ、人々の生活を大きく豊かにしてきた。しかし、戦略用重要資源にもなり、各国が争奪をして紛争の原因ともなった。メジャー(国際石油資本)、オペック(石油輸出国機構)は石油を背景に絶大なる影響力を持った。21世紀に入り一層深刻になっているのは、地球温暖化のための異常気象による、淡水、水不足と言われている。宗教ではイスラムの台頭。石油価格の想像を超えた高騰により、サウジアラビアをはじめイスラム産油国は経済力を高め、集まった膨大な資金を利用し、政府系ファンドを通じて世界経済への影響力を急速に高め拡大しつつあるのである。日本人はイスラムのことをあまり知らない。福沢諭吉が「荒火屋は風俗悪く、盗賊多し、男はラクダにまたがり、武器を携え歩いている」と記しているが、諭吉の見た100年前の風景と大差がないくらい、イスラムについては知らないのが実情だろう。最近メデイアが、高層ビル群、超高級ホテルの建ち並ぶアラブ首長国連邦の「ドバイ」を紹介し始めた程度だろう。水とイスラムの世紀に、どこまで認識を深められるかが、21世紀に生き残れる鍵のようだ。
積水ハウスの中期経営計画の中に、開発事業の海外進出、とあるが、多分ドバイへの進出を模索しているのではないだろうか。日本での開発事業の成功ノウハウを、ドバイで生かしたいと考えての事だろう。ドバイは2004年から原油高の後押しで発展し、2005年の経済成長率は16%、人口は120万を越え、近年、オイルマネーの金融の中心になり、欧米、日本、世界各国からの企業の進出も多い。中東のシンガポールとも言われている。イスラムの世紀といわれる時代、ドバイへの事業の展開は、目のつけどころは正しいのではないか。ただ、前述のように、イスラム社会の知識が少ない中での海外事業である。日本でのノウハウがそのまま通じるとは思えない。110年前、福沢諭吉が「福翁自叙伝」で言っている。「すべてのこと極端を想像して 覚悟を定め、後悔せぬよう」と。このシリーズで何回も言っているように、何が起こるかわからない時代で、予期せぬことが起きる可能性もある。中期経営計画の柱に入れたのであれば、過去、中国進出の失敗を再び繰り返さないよう、どんな難局にも立ち向かう勇気と綿密な情報の収集と計画が必要だろう。
野口孫子 (敬称略)
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