積水ハウスはずい分以前から、他社に先駆け持続可能な社会の構築を目指した「サステナブル宣言」を行い、「環境価値」「経済価値」「社会価値」「住まい手の価値」の創造を提唱してきた。この思想、理念を同じくしたのが、政府が打ち出した「200年住宅ビジョン」である。「 世代を超えて住み続けられる家、超長期にわたり循環利用できる質の高い住宅(200年)を目指す」としている。これはストック重視の住宅政策への転換を意味しており、積水ハウスが先取りして、良質住宅の長寿命化に取り組んでいることだった。 地球環境への対応、耐震技術、良質な街造りに力を注いできている。積水ハウスの先見性を、さすが、といわざるを得ない。
しかし、200年住宅ビジョンに対しては色々な問題点もある。長持ちする住宅を作ることは、産業廃棄物の軽減にもなり、良質な住宅は環境による資産価値も上がる。長い目で見ればコストも面でも減らせる趣旨にはだれもが賛成であろう。しかし、日本の家が短命なのは、短期で立て替えたほうが最適なシステムになっているからだ。
築20年の家は、中古の不動産流通では資産価値はゼロ、かえって中古の家があるために廃棄処分の手間がかかり、更地より評価が下がってしまう、まずこのシステムの改善が必要ではないだろうか。アメリカのように、住宅の流通がシステム化されているところでは、他人に売る、と思えば丁寧に、綺麗に住む。高く売れればいい家に住み替えられる。アメリカの住宅街で、景観、ルールが定められてるのは、違反する家があれば周囲の市場価値を下げてしまうためである。このようなシステム、市民のモラルが日本に根付いているとは思えない。まだまだ個人の権利意識が強く、わが身中心の身勝手が多いのではないか。政府はまず「家は売るもの」という発想を国民に根付かせなければならない。
企業だけで、日本の商習慣、住まい方を変えるのは難しい。壮大な理念を普及、実現するためには、なお一層の努力が要る。幸い、積水ハウスは全国に6積和不動産を子会社として有している。まず、積水ハウスの中古物件からでも、築20年以上をゼロ査定でなく、資産価値を上げる努力をしながら、中古住宅市場の 底上げを図るべきで、その試みはすでにされている。
これからの200年はドッグイヤーと言われ、変化のスピードは今までの1000年くらいに相当するだろう。住宅デザイン、省エネ、格安、環境、技術、景観、と200年の間に誰もが予測できない大変化が起こるかも知れない。「想像も出来ないこと。」このことを考えて見るべきときではないだろうか。
野口孫子
※記事へのご意見はこちら