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積水ハウス100周年を目指して (11) 運命協同体の思想はいずこへ | 愛する積水シリーズ
連載コラム
2008年4月17日 11:26

和田社長就任以来、彼の口から「運命協同体」という言葉は聞かれない。30年にわたり生涯現役として今日の積水ハウスを作り上げた元社長、田鍋は、事ある毎に社員へこの言葉を投げかけていた。「わが社は労労だ。労使はない。同じ船に乗った運命共同体だ」と。その証として、皆の働きで会社が利益を上げたら、中間決算、本決算の状況を見て、9月、3月に追加賞与を支給するとし、30年間赤字はなかったので、年4回(約12ヶ月)の賞与を支給していた。

しかしながら和田社長は就任三年目で、決算賞与を一回減らして3回にしてしまった。理由は会社の業績悪化ということだろう。社員の年収は当然減ってしまったのである。 会社が赤字になったわけではなかった。僅かな減益になっただけで経常利益は500億円を越えていた。立派な数字だ。苦しい台所事情があったろうが、社員に詳しい説明もないまま制度変更がなされたのである。その後は積水ハウス史上最大の利益を上げても、年4回に復活することもなかった。このことで社員と和田社長との信頼関係が崩れ去った。

和田社長が推進した開発事業が成功しなかったら、数字はもっと落ち込んでいただろう。 言い換えると、本業の落ち込みがひどい状況になっているということだ。大きな組織の会社は大型の船と同じで、内部で起きたことはすぐには数字に表れず、 数年かけてボデイブローのように効いてくる。遂に大和ハウスに売り上げで首位の座を明け渡してしまった。田鍋の作り上げた根本哲学「人間愛」の思想のもと、全社一丸、どんな苦難も乗り越えてきたが、田鍋亡き後の経営トップ和田社長は少し違うのではないか、という違和感を全社員が覚えたのではないか。積水ハウスの活力が出ない原因はこのあたりにありそうだ。

噂では、9月賞与が廃止された後、3月だけの決算賞与も事業所間で8ヶ月~0.5ヶ月と優勝劣敗の差をつけて、鼓舞していると聞いている。支店長、次長だけにとどめるならいいのだが、全所員(間接部門も含めて)が良きにしろ、悪きにしろ、責任をとらされていると言うのだ。営業担当なら納得する部分もあろうが、悪い事業所の間接部門の社員の士気は上がるどころか反感となってしまいかねない。同じ積水ハウスという船に乗り事業する上で、仲良しグループは弊害になるが、貧富の格差をつけすぎれば、組織はギクシャクしモラルの低下に拍車をかけるのではないだろうか。責任を取るのは上役にとどめ、営業にもそれなりの責任はとらせ、間接部門には個人の評価差はあっても、本社並みが順当ではないかと思う。積水ハウスの強みは全員参加の経営である。全員が使命感に燃え、愛する積水ハウスのため真の仕事をすること、これが積水ハウスの伝統なのだ。今やこの伝統もが消えようとしている。次期社長の安部に期待したい。内定した安部の言葉に「社員は運命協同体」(日経)が あった。まだ、彼の胸の内には田鍋の思想が生きていると確信した。安部の登場で、再び燃える積水ハウスの集団に変わるだろう。


野口孫子      (敬称略)


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