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特別取材

「暫定税率」 私はこう思う(1) (株)新出光代表取締役会長 出光豊氏
特別取材
2008年4月24日 16:01

ついに暫定税率期限切れ混乱は国会の都合から

先月末で、ガソリン税などの暫定税率が期限切れとなり、ガソリンに25.1円の暫定税率分の税額がかからなくなった。このような事態に際し、政府与党は憲法の規定を利用したかたちで暫定税率の復活・維持を求め、衆議院における再議決を行なう構えを見せている。ここ一月、ガソリンの価格は、そんな国会における与野党の駆け引きに左右される。そうした状況の、まさに火中にある石油販売会社大手(株)新出光代表取締役会長・出光豊氏に話を聞いた。

COMPANY INFORMATION
代 表:出光 芳秀
所在地:福岡市博多区上呉服町1-10
設 立:1955年3月
資本金:5億円
TEL:092-291-4134
URL:www.idex.co.jp


政治無策の結果

 ―暫定税率の期限が切れましたが、御社としては、どう対応されますか。

 出光 直営のスタンド、代理店に関わらず、仕入時点の原価を反映した価格での販売というかたちを採ります。すでに報道されていますが、揮発油税などを含めた道路特定財源に関わる税、いわゆるガソリン税は、製油所から出荷する時点で課税されるため、元売りの油槽所やガソリンスタンドのタンクには高い税率がかかったガソリンが約1~2週間分残っています。
 業界内の一部では、暫定税率分が価格に上乗せされた在庫がまだ残っている段階で、価格を下げる動きもあるようですが、弊社では、暫定税率分が上乗せされた在庫がはけてしまった後に、価格を下げるかたちを採ると思います。民主党は、暫定税率を乗せたままのガソリンを安く販売した例について、税の還付を行なえば良いなどと言っているようですが、販売各社で対応も違うため、手続き上は無理でしょう。

 ―混乱も予想されますが。

 出光 直営店については、スタンドの油槽を満タンにしていますが、業者によっては仕入れを控えている所もあります。税が無くなった分の安い仕入れを待っているということですが、当然、その後の発注が集中します。これは、弊社だけではなく業界全体に言えることですが、急な発注に対応するために輸送面での混乱が起きるのではないかと懸念しています。

 ―今回の国会における一連の混乱についてはどのようにお考えですか。

 出光 政治家が好き勝手にやった結果、このような混乱が引き起こされたわけです。与野党ともに、国民生活を考えた歩みよりの知恵も無い。まったく日本の政治家の質は底に墜ちてしまっています。
 ―国民のために暫定税率を下げるというのが民主党のスタンスですが。
 出光 国民のためと言いながらも、1カ月間に限られたことですし、国庫には2兆6,000億円の穴が空き、歳入が不足します。結局、歳入不足は国民へのツケとなるわけですが、その辺りについての民主党の説明はいい加減で、とても信用できません。

一般財源化は詐欺行為

 ―一方、福田首相の「新提案」についてはどう思われますか。

 出光 福田首相は一部、民主党案をのむかたちで、道路特定財源の一般財源化に言及しましたが、使い道を特定して集めた税を勝手にほかの財源に使うという提案は詐欺行為と言えます。一般財源化を宣言するならば、一旦、道路特定財源を廃したうえで、国民に対して新たなかたちで負担を訴えるのが筋でしょう。

 ―暫定税率については、どのようにお考えでしょうか。

 出光 ガソリンの価格から暫定税率分が無くなれば、現在、買い控えをしているカーユーザーの消費は増えると思います。しかし、事の本質はガソリン消費量の上下というようなことではありません。問題は、暫定という約束だった税が、30年もの間、国民から徴収され続けているということです。政府提案は、それをさらに10年続けるということで、国民との違約を、またぞろ平然と延ばそうというものです。暫定税率分の財源が必要であれば、こちらも、道路特定財源の一般財源化と同じく、一旦廃止したうえで改めて国民に問うべきです。

社会の劣化

 ―国会の混乱の原因はどこにあると考えられますか。

 出光 今回の国政の混乱で明らかになったことは、二院制の問題点です。現在の状況は、これまでも引き起こされる可能性はあったわけですが、それが、自自公連立や自公連立が行なわれ回避されてきた。ところが、先の参議院選挙で民主党が大勝したことで、制度としての欠陥が露呈したわけです。

 ―わが国の二院制の欠陥とはどのような点にありますか。

 出光 日本の衆参両院は、等しく役割を持つという点に問題があります。たとえば、英国も上院(貴族院)と下院(庶民院)の二院制ですが、世襲制である上院には実質的な権限がなく、下院の議決で国政は動きます。米国も、上院と下院で役割が明確に別れています。英国や米国も日本と同じように形式としては二院制なのですが、両院の権限や役割が違い、今回、日本の衆参両院で見せたような醜態は起こらない制度設計になっています。
 この機会に自民党は二院制の即刻廃止し、一院制にすることを提案するべきです。それによって議員も減り、国会の運営にかかる莫大な費用の無駄も削減できます。

 ―一連の混乱は、国会の制度上の問題点にとどまらず、日本政治の「質」ということについても考えさせられる点があるように思います。

 出光 米国で先行して成立した企業の法令遵守義務に関する、いわゆるSOX法ですが、細かい遵守義務が企業活動を阻害するということで、すでに内容を緩和する方向にあります。米国のそのような先行例があるにもかかわらず、遅れて日本でも「J-SOX法」を成立させ、企業は法管理下のもと活動を行なうような時代になりました。ところが、実体としては社会的信用を失墜してしまうような企業の行為は後を絶たないという間抜けな現実があります。金融政策にしても、政府はゼロ金利政策を通して、本来、真っ当な利息があれば300兆円に及ぶと言われる利子所得を国民から没収したうえに、銀行につぎ込み、不良債権を処理させチャラにしたかと思ったら、今度はサブプライムローンで7,000億円もの焦げ付きを出してしまう。これほど、バカな事態がありますか。

 ―結局、制度に頼り、実がないということですね。

 出光 松下幸之助氏の言ですが、「経営学は教えられても、経営は教えることができない。知識は伝えられても、知恵は伝えられない」ということに尽きるかと思います。

 ―本日はお忙しいなか、御社のことに関わらず、大きく国政全般の問題まで、示唆に富むお話をありがとうございました。

 出光 こちらこそありがとうございました。

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