次に、「単独移転案」と「福岡メディカルコンプレックス(FMC)構想」との医療面での比較である。
まずは、何より肝心な患者に対する「診療体制」についてであるが、「単独移転」では現状と何ら変わらないのに対して、FMC構想では、九大病院との連携が図れることから、多様な小児・産科疾患に対応でき、小児・周産期救急の拠点化にもなりうる。さらに、「キャリーオーバー」診療、すなわち、小児期の疾患を抱えた患者が大人になったときに受ける医療にもより対応がしやすくなる。医療問題を考えるに際して、ともすれば、「子ども病院」と「一般の病院」というように区分して考えがちであるが、慢性的な疾患を持っている子ども達にとって時間の経過というのは重要な要素なのである。患者が大人になるにつれて成人独特の病気も増えてくることもありうるし、病院を移ることも考えなくてはならない。小児科だけで完結するというものではないのだ。
従って、患者に対する診療という点でもFMC構想の方が数段優れていると言えよう。
仮にもし、「単独移転」が当初考えられていたような市民病院との統合移転だったら、患者に対する診療面でも、FMC構想と同等だったかもしれないのだが…。
何故、統合移転を止めてしまったのか理解に苦しむところだ。何か「特別な事情」でもあったのだろうか。
さて、比較の要因としてもう一点は、「付き添い患者家族支援」である。難病を持つ子どもを抱える家族にとって、負担軽減のため、利用しやすい宿泊施設(ホスピタル・ホスピタリティ・ハウス)は必要不可欠だが、現在、子ども病院では患児家族宿泊施設「ファミリーハウスわらべ」を併設しており、九大病院小児科では「すまいるハウス」を併設している。つまり、一支援施設で一つの医療機関をカバーしているわけだ。「単独移転」をしてもこの状況は何も変わらないが、FMC構想だと、一つの支援施設で二つの小児医療機関をカバーできることになり、効率的である。
以上、「診療体制」及び「付き添い患者家族支援」について比較したが、結果は明らかだろう。FMC構想の方が、患者にとってもその家族にとっても、充実した医療及び支援体制を提供できる。(つづく)
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