次に、「単独移転案」と「福岡メディカルコンプレックス(FMC)構想」とのコスト面での比較である。
まずは、「土地代、施設費」についてだが、単独移転案でより経費が安く済むと見積もられた「PFI方式」でも、初期経費は新規土地取得費、建設費、医療機器費等を合わせると252億円かかる。現在の子ども病院の土地を売却しても70~80億円にしかならず、差し引き170~180億の経費がかかることになる。一方、FMC構想だと、九大病院の土地の貸与料いかんにもよるが、それを抑えることができれば、現在の子ども病院の土地差額を設備費等に回すことができる。
次は、「医療設備費」についてだが、医療機器は非常に高額だ。「単独移転」では移設見込みの機器を除いて、約50億円かかる、と見積もられているが、FMC構想だと、九大病院との医療機器の連携運用が可能になり、新規の機材購入は抑えられる。
次に人件費だが、単独移転した場合は、現状と何ら変わりはない。しかし、FMC構想だと、医療スタッフの相互乗り入れによる人的資源の効率化が図られ、人件費も抑えることができるだろう。
以上見たように、コスト面でも圧倒的にFMC構想の方が優れていると言っていいだろう。
交通面、医療面、コスト面について、比較を行ったが、どの面においても、FMC構想の方が優れている。つまり、FMC構想こそ「安くて、効率的で、利用者に優しい」子ども病院の経営改善プランと言っていいだろう。もちろん、記者は医療に関しては素人である。専門的見地からすれば、FMC構想とて問題はあるかもしれない。そもそも、この話を九大病院が受け入れるかどうかさえもわからない。しかし、子どもを持つ親として、納税者としての視点で観るときに、ここまで優れた案があるというのに、検討すらしないというのであれば、極めて不可解である。まだ遅くはない。FMC構想の実行の可能性を精査した上で、もう一度、「最終報告」を差し戻して、比較を行ってみてはどうだろうか。
(つづく)
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