吉田宏市長は人工島事業の見直しを公約に掲げながら、当選して1年も経たぬうちに事業推進へと舵を切った。変節と言われても仕方がない。しかし、市民病院とこども病院、二つを統合移転するという山崎前市政下での既定路線だけは変更し、公約を守ろうとしたというアリバイだけは残したかった。だが、土地は買わねばならない。
出てきた答えがこども病院だけの人工島への単独移転である。
こども病院を、なぜ人工島へ移転させなければならないのか、市民に対しては未だにきちんとした説明はなされていない。
もう決まったこと、とする関係者も多いが、決してそうではあるまい。決めるのは「市民」なのだ。
MAXふくおか市政ニュースでも、次の市政の重要課題として、こども病院の移転問題を取り上げてきた。九大の医療関係者による新提案は極めて現実的かつ魅力的なものである。
遡れば、山崎前市政の時代からこども病院の移転問題を取り上げてきた筆者としては、今一度問題提起をしておきたい。
それは、市民病院とこども病院についての議論が、市民不在のまま進められてきたからである。
◆市民にとって必要かどうかの議論を尽くせ
忘れ去られたとしか言いようがないが、市民病院とこども病院は、福岡市民にとって必要か否か、そうした議論を聞いたことがない。
同じ市立病院であるが、それぞれの成り立ちも性質も違う二つの病院が本当に必要なのかどうか、市民の視点に立った出発点は省かれてきたとしか思えない。
同時に、両病院にかかる1年ごとの福岡市の支出金額、医療水準、利用者の地域別割合など、分かりやすく説明がなされて来たとは言い難い。
まずは市民に対し現状を知らせ、市民病院が必要なのかどうか、こども病院が必要なのかどうかの基本的な議論をするべきである。
必要のない病院などあるはずもないが、毎年、税金を数十億単位で投入し続けることの意味を市民に理解してもらい、その上で市立病院として存続が必要か否かの確認をするべきであろう。
本稿では、人工島移転の是非が問われる「こども病院」に論点を絞るが、今日までの市民軽視の進め方は目に余るものがある。
さまざまな視点から、こども病院の人工島移転を問い直してみたい。
※記事へのご意見はこちら