かつて人工島事業の計画に参画した方々からも意見を聞いてみた。
「こども病院だけを単独で人工島に移転させる『必然性』がない」と厳しく批判する意見が多い。
市民病院と統合移転することに意味があるのであって、メリットがなくなる単独移転は意味がないというのである。もちろんこども病院だけを移転させる場合、それが人工島でなければならない理由もなくなる、と切って捨てられる方もいた。
かつてMAXふくおか市政ニュース(弊社メルマガ)でも指摘したとおり、統合と言うことになれば、高度な医療技術や医療機器、人材の共有等、多くのメリットが生まれるのは確かである。
こうした意見の根底には、「統合」が前提の人工島移転という、確固とした信念がある。
筆者は、統合移転であったとしても、人工島への移転には断固反対するものであるが、統合移転案には、ある程度の説得力があったことは認めざるを得ない。
その統合移転案が、何年もの議論を経て決められたものであることもまた、事実である。しかし、その過程でも市民の意見が充分汲み上げられたかというと、決してそうではあるまい。ただ、1年にも満たない、まさに付け焼刃で「検証・検討」した結論よりも重たいものであることは間違いない。その証拠に、福岡市病院事業運営審議会・同専門部会・新福岡市立病院将来構想アドバイザリー会議等の議事録等は、きちんと残されていた。
一方、福岡市の検証・検討チームの議事録は、MAXふくおか市政ニュースがすっぱ抜くまで、会議の議事録さえ残されていなかったのである。
役人だけで、都合いのいい結論を導いた「検証・検討」であったことがうかがえる。
話をこども病院に戻そう。子ども病院の「移転」と表現してきたが、感染症センターを分離させ、周産期医療の充実を図る病院となると、実は病院を新たに「新設」することに他ならない。だからこそ、市民に病院の必要性や要望を聞かなければならない。
どのような形になるにしろ、巨額な税金投入が不可欠だからである。
同時に、現在50%を切ると言われるこども病院の福岡市民の利用率について、考える必要が生じる。
西日本には50前後の国立病院が存在する。しかし、こども医療専門の病院は福岡市こども病院・感染症センター1箇所しかない。
当然こどもが高度な専門性を有する疾病にかかった場合、西日本の多くの県から患者が来ているのが現状である。
本当に「福岡市立」という形が自然なのだろうか。むしろ国立(あるいは県立)の医療機関としての実態に近いと思われるがいかがであろう。広域医療は国の責任ではないだろうか。
福岡市は九州全体に対し、それなりの貢献をする必要があるのは当然だし、子ども病院を福岡市が経営することで一定の役割を果たしてきたのも認めよう。しかし、大きな病院を、それも高度な専門性を持ち、広大な地域をカバーしなければならない医療機関を作るのなら、国に対して何らかの議論を持ちかけるべきではないだろうか。
こうした発想は、吉田市長にはなかったようである。
だからこそ、1年もかけずに、いい加減な「検証・検討」がまとめられたのであろう。
つづく
※記事へのご意見はこちら