サブプライムローンの問題が欧米で発生以来、世界的に経済が減速し始めてきた。この数年、日本企業、特に大手企業の好業績で、今春には大幅な賃上げもあるだろうと予測されていたのが、一転、不況へ向かいつつある。安易な期待も吹き飛んでしまった。中小企業は大企業の需要減とコストダウン圧力によってさらに厳しくなっている。大企業との格差は一層鮮明になっている。こうした中、政府の対策は手詰まり感が強い。膨大な借金のため、財政も思い切った予防措置が取れない。低金利のため、日銀の利下げも余力がない。いま求められるのは経済運営に対する力強いメッセージだ。
しかし福田政権はどこへ行こうとしているのか、いまだ政府の意図が見えないのである。アメリカの黒人指導者キング牧師が「私達には夢がある。子供達が肌の色でなく、人間性で判断される夢、豊かさの海に浮かぶ貧しさの孤島がなくなる夢、その日は必ず来る!信念があれば、絶望の山から希望の石を切り出せる。」と言って、差別されている黒人に勇気を与えた。福田政権は無為無策、何のメッセージも出せず、逆に国民に、将来の夢を踏みにじるような後期高齢者医療制度を実施したりしている。
積水ハウスも日本経済の減速により、住宅を取り巻く環境は一段と厳しくなるっている。 和田社長の努力で、開発事業がこの数年寄与し、好決算を維持してきた。しかし、開発事業は継続的に受注が見込めるわけではないので、この1,2年減益になる見込みである。本業の事業、工場生産材による住宅、集合住宅は、元社長の田鍋がいた時代と大して売り上げは伸びていない。言葉を変えれば失われた10年といわざるをえない。
関連会社の積和不動産を子会社化したこと、新規の開発事業を取り込んだことで、1兆6千億円と売り上げを伸ばしてきたが、内容を見ると、不動産の売り上げは積和不動産の積水ハウスの賃貸アパートの借り上げの売り上げ、開発事業は資金力による、超一等地の仕入れ、そこに竹中等のゼネコンと連携し、商業ビル、超高級マンションの街並み等の提案力で成功してきたのである。
土地の仕入れを未来永劫コンスタントに続けることは難しい。どうしても波がある事業である。田鍋が常に「本業に徹せよ」といっていたことの重みが改めてわかる。積水ハウスは工業化住宅でしか生き残れないことを肝に銘ずべきではないだろうか。高品質の工業化住宅で差別化し、積水ハウスはそれで高級、高品質な住宅として評価され信任は厚い。いま一度、地味だけど地道に本業に徹すべき時ではないか。積水ハウスには本業に代わる王道はないと信じる。今必要なのは、社員に夢を語りかけることだろうと思う。
野口孫子 (敬称略)
※記事へのご意見はこちら