福岡市 市内新生児ICU病床数 独自で把握せず!
驚きの実態判明
人工島に建設予定の青果市場、大型商業施設、物流施設、そして住宅群。全てが交通量の大幅な増加をともなう。しかし、人工島への内陸側からの進入は、たった2本の橋に頼るしかない。
そこに、人の命にかかわる「病院」を作ることが何を意味するのか、誰が考えても分かることだろう。
季節(特に夏は人工島周辺・人工島内の渋滞が激しい)や時間帯(新青果市場関係車両が午前中に集中することは前述した)によって、救急車が渋滞に巻き込まれることは、分かりきっている。
周産期医療の機能確保を掲げる「新こども病院」だが、未熟児の搬送については、「30分」という時間が重大な意味を持つとされる。
何度も紹介してきた言葉だが、かつて福岡市病院事業運営審議会の議論の中で、こども病院長が周産期医療について言及し、
「年間30名から40名の1,000g以下の赤ちゃんが院外で出生され、そして院外から搬送されて来られる訳ですけれども、これはその30分が赤ちゃんの一生を決めてしまうことになりますので…(以下略)」
と発言している。
子どもの一生を決めてしまうという、「30分の重み」を知り尽くしている医師の発言は説得力がある。渋滞が予想される人工島内に救急搬送した場合のリスクは大きい。まさに人の命と土地売却、どちらが大事かという話になるだろう。
ところで、福岡市内での1,000g以下の低体重児出生割合は毎年8~10%前後で推移しているとされる。新生児ICU(NICU)での保育が必要となるケースは、低体重出生だけとは限らないが、新生児ICUを有する病院への搬送は、かなりの数に及んでいると推定される。
このうち、市内の新生児ICUが満床で、福岡市外の病院へ搬送された件数は、平成17年度で15件、18年度17件、19年度18件となっている(福岡市消防局の回答)。
新生児ICUを有する病院としては、福岡大、九州大、九州医療センターの3病院が挙げられるが、19年6月1日現在で、3病院合計51床となっている(市保健福祉局回答)。
満床で市外搬送するケースがあるということは、必ずしも市内の新生児ICUが充足しているということではないと考えられる。
しかし、昨年6月のデータしかないというのもおかしな話である。
福岡市 新生児ICUの実態把握せず!
実は、今回改めて福岡市保健福祉局の担当課に確認したところ、福岡市独自では、新生児ICUの病床数や実態について把握していないことが明らかとなった。もちろんリアルタイムでの病床数確認も行なっていないという。
市保健福祉局地域医療課も私立病院担当課も、県の調査データしか持ち合わせていないというのであるが、こども病院の人工島移転を検討しながら周産期医療の現場を把握していないということは、理解に苦しむ。驚きと言う他ない。前述した平成19年6月1日現在の病床数は、県が公表した数字なのだ。
福岡市は、こども病院の人工島移転を進めながら、当事者意識がなさ過ぎる。
(つづく)
※記事へのご意見はこちら