北九州空港、それはグローバル
ポジション獲得の起爆剤
北九州空港開港以来、そのポジショニングは様々論議を呼び、様々な評価を得てきたが、どれも外側からの視点で語られ、核心に迫る論議は少なかったように感じられる。
その中で今回は北部九州産業の中核を占める自動車産業。その産業クラスターの頂点で、北部九州進出の先覚者であるのが日産自動車株式会社だ。その九州工場副工場長、斉藤淳氏に、中核産業を担う立場から見た新北九州空港のポジショニングについて聞いた。
日産自動車における九州工場の役割
—今回は北九州空港の現状と将来展望を探り、検証していきたいと考え、民間の、それも北部九州産業の中核をなす企業の立場からの視点でどう捉えられているかを伺うために貴重なお時間をいただきました。
斉藤 九州工場は日産の国内生産工場、これには4つの工場がありますが、その中の最大の拠点工場です。ここで生産される完成車の輸出比率が7割以上となっています。ですから日産の中でも海外輸出の拠点となっています。その上現在関連会社の日産車体が敷地内に工場を建設中で、これが完成、操業を開始すると全体で、年間生産能力65万台を誇る国内最大、世界的に見ても類を見ないトップクラスの生産能力を持つ大型拠点工場となる見込みです。
ですから社長のカルロス・ゴーンも言っていますが、「グローバルの核」となる工場、すなわちそういう位置付けが成された自動車生産大型拠点工場となっています。
—そう言ったポジショニングにある日産九州工場から北九州空港への期待という点ではなにかありますか?
斉藤 産業的に見れば苅田地区は海と陸の交通インフラが整備され、充実しており、その点で大きなメリットを持っています。そこに空のインフラが重なれば、交通、物流インフラが相当整備され、充実した魅力ある地域だと言えますね。
特に私たちはグローバルな活動を行なっていますから、北九州空港は人的移動の利便性に貢献してくれています。特に東京との行き来には大きなメリットがあります。ただもう少し空路の拡張と増便が図れるともっと利便性が増大するでしょうし、アジアとの交流に大きなメリットが生まれるでしょう。
—おっしゃる通り国内線発着便数と空路の増加が望まれますし、国際線も上海便だけではなく、もっと多くの路線開発が望まれるところですね。
斉藤 上海・広州便は当社も望んで開拓されたものです。ただこれは週3便ですからいささか不便です。やはりデイリーになることが望まれます。ほかには韓国ですね。ここら辺が整備されると利便性が飛躍的に向上し、利用客数もより一層の向上が見込めるのではないでしょうか。
健闘してきたスターフライヤー
—ユーザーとしてスターフライヤーの客室ソフト、サービス面を他社と比べてどうお感じになっていますか?
斉藤 シンプルで機能的なサービスをしていると言えます。我々ビジネスマンにとって余分なサービスは必要ありません。快適に移動できるのが一番です。その点ではニーズと合致しているのではないでしょうか。ビジネスユースとして客席のゆとりなど快適性も良いですね。乗ればその良さが実感できます。シンプルで機能的、且つ快適、この三要素が充分に満たされています。あとは、シャトル便というメリットもありますね。
—認知度の点ではいかがでしょう?
斉藤 当社で言えば、羽田・北九州間、すなわち本社や巻頭の事業所と九州工場間の移動ではほぼ100%使っていますから、日産での認知度は100%です。一般で言えばANAとコードシェアをしたことで認知度は上がっている、と言えますね。当社も株主ですから関連会社にも進んで告知し、利用を促していますから、段々と搭乗率も向上し、良い形ができつつあるのではないでしょうか。
北九州空港、その将来展望と見えてくる姿
—そう言う意味では新規参入の空港、航空会社でありながら、行政、民間共に協力し合って盛り上げている数少ない例と言えますね?
斉藤 三位一体の努力、まさにその通りだと思います。空港開港2年でここまで来ていることは喜ばしいことじゃないでしょうか。地元にとって無くてはならないものになってきています。いよいよこれから、と言うことでしょう。期待感は盛り上がっていますよ。
—ところで福岡空港の去就、建設問題が取り沙汰されていますが、北九州空港との関係も併せてどうお考えになりますか。
斉藤 やはり佐賀も併せて機能分担を図っていく、と言うのが合理的ではないでしょうか。北九州空港は海上空港で騒音問題が無く、いわゆる24時間運用空港としての機能を有していますから、関空や名古屋との連携が取れれば、その役割は相乗効果を生み、大きなポイントを占めるはずです。有機的、機能的連携を図っていくことができれば、新たに大きな展望がそこに生まれるはずです。
またこの地域は大型生産工場が多く、そういった所は当社を含めて24時間操業が普通ですから、そういう点から見てもお互いの連携が生まれれば、北部九州、なかんずく北九州地区がグローバルなポジションを獲得できるようになるのではないでしょうか。
—重厚長大の産業構造を持ち、その中で将来性を一旦見失いかけた北九州が、復権し新たなるグルーバルポジションを獲得する起爆剤となりうる新産業構造と新北九州空港。
その将来展望を伺うことができ、これからの元気の源を垣間見ることができました。本日はありがとうございました。
斉藤 こちらこそありがとうございました。
[プロフィール]
斉藤 淳 氏1965年 岩手県出身
1979年 日産自動車株式会社入社
2001年 日産九州工場総務部長
2007年 日産九州工場副工場長
ゴーン社長のもと、日産リバイバルプランの策定・推進に関わる。