取材後記
「企業再生」という言葉に対するイメージとはどんなものだろうか。最近流行のマンションのリノベーションのように、「古い体質・組織の企業を新しいものへと再生させる」という前向きなイメージももちろんあるだろう。しかし、「企業再生=ターンアラウンド」と言われるように、「経営破綻した企業、あるいは破綻しかけている企業を再生する」というマイナスイメージが付きまとうのも事実である。
今回取材した城山観光(株)は、創業→ブランド確立と事業拡大→バブル期における過大な設備投資、放漫経営→バブル崩壊による多額の負債発生、経営体制の歪み→私的整理による負の遺産処理、金融機関主導による経営陣刷新という途を辿ってきた。手続き上は、「私的整理」というかたちでのターンアラウンドだった。
しかし、同社の場合は刷新・改革という意味でのリノベーションに近かったのではなかろうか。と言うのも、再建前倒しの理由のひとつとして挙げられている「主力事業の業績が好調だった」ことからもうかがえるように、もともとあった素材そのものを最大限に活かすことが、再生への近道だったからである。
元来、同社の売上の8割から9割近くがパチンコ事業だったというから、ホテル事業とパチンコ事業の切り離しは大きな決断だっただろう。しかし一方で、苦戦を強いられざるを得ない業界環境下にあるパチンコ事業を別立てにすることで、城山観光=ホテルという本来のイメージを取り戻そうという意図も感じられる。
また前回も述べたように、単なる負の遺産処理が再生完了ではない。常に再生への意志を持ち、再生後も企業を維持させる必要がある。それには同社の場合、債権者だけではなく、施設を利用する顧客による支援が不可欠であるはずだ。
しかし、それにしては、やはり情報公開量が少なすぎるのではないかという点が気になる。私的整理当時も問題にしていたが、再生計画の具体的な中身は明らかにされていない。「守秘義務」があるのも分かるが、支援者に対する「公開義務」もあるのではないか。せめて再生スキームくらいは提示する必要があったと思う(ちなみに決算書も非公開)。
「金融機関に迷惑がかかるから」という理由で口が重かった同社。真に自己再生を果たすときは、金融機関主導の経営を脱却し、生え抜きの社員たちの手によってリノベーションされた「城山ブランド」を確立したときであると考える。その意味で、同社の再生はまだ終わってはいない。
(了)