ほっかほっか戦争は、どうやらほっかほっか亭総本部(以下総本部)の株がハークスレイに移ったことにより勃発した。その裏にハークスレイ東京進出の戦略があったかどうかは分からないが、実はハークスレイの青木代表は総本部を作り上げた人物の一人である。近畿地区にほっかほっか亭を拡げるため、現ハークスレイを創業した。東京を含む東日本はダイエーが地区FCとなり、九州地域本部(87年12月プレナスが吸収合併)が九州・山口をエリアにして、当時乱立していた持ち帰り弁当屋市場を、ほっかほっか亭ブランドが凌駕していった。その後ダイエーは経営不振に陥り、ほっかほっか亭の地域本部の権利をプレナスに売却、プレナスは、静岡、関東から北海道までの大市場を手に入れた。
青木代表率いるハークレイは、近畿・中国・北陸・東海をエリアに勢力を拡大、2001年2月大証2部に上場(04年9月東証1部に上場)を果たした。一方、プレナスはハークスレイより早い1993年7月に店頭登録(現、ジャスダック、2002年12月東証1部上場)しており、上場に関しては、ハークスレイはプレナスの後塵に甘んじた。
2006年に総本部の代表である田渕氏が、自社の所有株(発行株数の54.1%)をハークスレイに売却した。当然、総本部代表にはハークスレイの代表である青木氏がなった。青木代表は、総本部のこれまでの地域本部に対する管理を一変させ、総本部主導型に切り替えさせようとした。プレナスによると「ハークスレイが総本部の筆頭株主となって以降、総本部は従来の経営姿勢から大きく方向を転じて、・・・・・・自らが定める手法を取り入れるよう再三に渡って要求・・・・」とある。プレナスも総本部の株を44%所有するが、如何せん44%では支配権はない。
こうしたなか、プレナスはダイエー買収時にほっかほっか亭の商標権も買い取ったとして、総本部に対し商標権の使用料の請求訴訟を起こした。これが訴訟合戦の発端となった。
これに対し総本部は、静岡地域本部との契約更新(2007年8月1日満了)を一方的に拒絶する通知書をプレナス側に送りつけた。しかしプレナス側は更新拒絶の理由がないとして、そのまま営業継続した。(ほっかほっか亭は各々の店舗オーナーが地区FCと契約している)
ここまできたら双方話し合いの場など微塵もなかろう。続いて総本部は、プレナスが2007年2月より東京都内のオフィス街で始めたワゴン販売サービスに対して、同年10月、地区本部契約違反として営業差し止め訴訟を起こした。
また総本部は、2007年11月、プレナスが有する埼玉・群馬・福島・宮城・山形の契約 について(2008年2月満了) 更新しない旨の通知書を送った。
以上の経過に対して、プレナスは2008年1月15日、「総本部との間で既に信頼関係が破壊されており、・・・・・・お客さんや加盟店(FC店)の信頼を損なうとともに株主に対して責任を持った経営が出来ない」として、「総本部との契約解除」を役員会で決定、2月6日総本部に対して契約解除通知書を送った。また、プレナスは、契約解除通知が有効となる5月14日より、ブランド名の「ほっかほっか亭」から新ブランド「Hotto Motto(ほっともっと)」に変更する事を発表した。
この契約解除に対して総本部は、2月14日、東京地方裁判所に仮処分命令の申立てを次の4項目について行った。
プレナスは、
(1)2010年2月28日まで、持ち帰り弁当事業を行ってはならない。
(2)プレナス管轄エリアの地区本部や加盟店に対して、面会・電話・郵便を通じて、加盟契約の改変・終了、並びにHotto Mottoへの勧誘禁止
(3)静岡県内における「ほっかほっか亭」の標章禁止、08年8月末まで持ち帰り弁当事業の禁止。
(4)埼玉県・群馬県・宮城県・山形県及び福島県内における、「ほっかほっか亭」の標章禁止、09年2月末まで持ち帰り弁当事業の禁止。
ところが東京地裁は3月28日、ハークスレイの仮処分申請をことごとく却下した。この仮処分命令の申立ての却下決定は、裁判所の一定の判断が作用したと思われる。
プレナスは1987年6月(昭和62年)ほっかほっか亭九州地域本部を吸収合併して参入して以来20年の間、ほっかほっか亭をハークスレイと共に発展させてきた功労者である。総本部の権限は、総本部と地区本部(プレナス)との長年の慣行が優先され、一定の制限を受けるとしたのであろう。プレナスが言うとおり、総本部との関係悪化はハークスレイが支配権株を持ってからのことである。ここまでプレナス=「ほっかほっか亭」が成長してきた事実は揺るぎようもない。
経営者が交代した総本部が、地区本部(プレナス)の管理方針を強めるのは、当該地区本部の経営が悪化している場合に限られよう。
今後、プレナスとハークスレイは持ち帰り弁当市場で、地域という垣根を撤廃して競争すれば良いことであり、より良いサービスをエンドユーザーや加盟店(FC店)に提供して、優劣を競い合ってもらいたいものである。
しかしながらハークスレイが、子会社である㈱ほっかほっか亭総本部が自社の営業戦略にも関わるような重要な訴訟をおこなっているにもかかわらず、何ら情報開示されていない点も気になる。
ハークスレイは3月4日、すでに自らが筆頭株主(31.9%所有)である、飲食店舗の総合コンサルティング会社、TRNコーポレーションの公開買い付けを発表している。同社の公開買い付けの理由で明らかなように、関西地区を地盤とするハークスレイと東京・東海を地盤とするTRNコーポレーションは地域的に相互補完的な役割を担うとしており、まさに東京・関東進出を狙ったものであろう。
ならば、ハークスレイは、プレナスのHotto Mottoへのブランド店舗名変更を、素直に歓迎した方が得策であろう。東京進出も現実のものとなり、持ち帰り弁当市場で優を競い合えばよいことである。
ただ総本部は、ほっかほっか亭がなくなれば、エンドユーザーや加盟店に対して多大なる迷惑がかかる事を念頭に置くべきであったろう。
【ほっかほっか亭総本部とプレナスの最近の経過】
2006年6月 | ハークスレイが、「ほっかほっか亭総本部(総本部という)」の発行済株式の54.17%を取得、総本部の創業オーナーである田渕氏からハークスレイが購入、代表取締役も田渕氏からハークスレイの青木代表(会長)に交代。 |
※ これ以降、地区本部はプレナスに対して、契約に基づき締め付けとも思われる管理強化がなされる。 | |
2006年12月19日 | ☆支払請求訴訟 P(プレナス)⇒ 総本部 |
プレナスは、「ほっかほっか亭」の商標権はプレナスにあるとして、ほっかほっか亭総本部を相手取り、商標権の使用料として9,519万円の支払請求訴訟をおこす。その後取り下げる。(プレナスは、関東のほっかほっか亭の地域本部権をダイエーから購入した時、商標権も付いていたとしていた) これまで所有しているとしていた商標権を放棄することを08年1月15日発表。 |
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2007年5月29日 | ☆契約更新拒絶 総本部 ⇒ P |
ほっかほっか亭総本部は、プレナスに対してプレナスが経営する静岡県の地区本部契約を07年8月末日の契約期間満了をもって解除する通知書を送付。 | |
2007年10月2日 | ☆営業差し止め訴訟 総本部 ⇒ P |
ほっかほっか亭総本部は、プレナスが新サービスとして行っていたワゴン販売の中止求め営業差し止め訴訟提訴。 ※プレナスはワゴンサービスを07年2月より開始 |
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2007年11月28日 | ☆契約更新拒絶 総本部 ⇒ P |
ほっかほっか亭総本部は、プレナスに対して埼玉・群馬・福島・宮城・山形の各県の地区本部契約を08年2月末日の契約期間満了を持って解除する通知書を発送。 | |
2008年2月6日 | ☆フランチャイズ契約解除へ P ⇒ 総本部 |
プレナスは、ほっかほっか亭総本部に対して、契約を締結していても自由な創意工夫が大幅に制限されるとして、FC契約そのものを解除する旨の通知書を発送。 解約通知到達後の3ヶ月以後にあたる5月14日をもって解除する内容である。 |
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※2008年2月12日 | ☆新ブランド名発表 P |
「Hotto Motto (ほっともっと)」5月14日以降使用するブランド名 | |
2008年2月12日 | 仮処分命令の申立て 総本部 ⇒ 東京地裁 ⇒ P |
詳細は文面中 | |
2008年3月28日 | 仮処分命令の申立て却下 東京地裁 ⇒ 総本部 |
詳細は文面中 |