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特別取材

それは毒か、薬か 農薬のリスクを考える(上)
特別取材
2008年4月 7日 17:09

いわゆる「毒入りギョウザ事件」以降、農薬への負のイメージは、より一層強くなってしまった。「減農薬」「無農薬」というのは一種のトレンドで、従来、私たちは農薬を含んだ野菜を食べて育ってきた。「残留」という言葉のもっとも恐ろしいところは、農薬が体内に蓄積するかもと思わせてしまう点だ。もちろん、日本で許可が下りている農薬は体内で分解され、排出される。外国産野菜への懸念を完全に払拭することはできないが、少なくとも日本産野菜の農薬に過剰反応するのは、あまりにリテラシーに欠ける。

農薬は毒か

 私たちは、農薬というものに対してあまりに無知である。無思考に昨今のトレンドに流されるならば、農薬は「薬」などではなく「毒」、無農薬こそ本来の野菜であると、声高に主張してしまいそうだが、農薬が何たるかも知らず、盲目的に無農薬を信仰することは止めた方が懸命だ。農薬を使わずに野菜をつくり、それを売って生計を立てられる農家が存在し得ない以上(根拠は後述)、無農薬の需要ばかりが高まるのは、これまで許容範囲内の農薬を使って真面目に野菜を作ってきた生産者を苦しめることになる。

 農薬取締法による「農薬」の定義を記すと、「農薬とは農作物(樹木および農林水産物を含む。以下、農作物等という)を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみ、その他の動植物またはウイルス(以下、病害虫と総称する)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他薬剤(その薬剤を原料または材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む)、および農作物等の生理機能の増進または抑制に用いられる成長増進剤、発芽抑制剤その他の薬剤」となる。
 生産の妨げになる病害虫から、作物を守るのが農薬。農薬は、農業から病害虫との戦いを減らし、安定的に一定の量を収穫することを可能にした。また、農作業を効率的にし、労働時間の短縮にも寄与するなど、農業を「自分たちが食するものをつくる」という次元から「余分につくって売る」という局面にまで押し上げた。農薬があるからこそ、農家が生産した野菜をスーパーで買うことができるということを忘れてはならない。

 こういうデータもある。農薬を使用しないで栽培した場合の病害虫や雑草による収穫量・出荷金額を調べた結果、収穫量の減少率以上に出荷金額の減少が起きることが分かった(【表】参照)。作物の品質までも左右してしまうのだから、収穫量の減少に正比例して出荷金額が減少するという単純なものではない。この結果から導かれる結論は、農業で収益を出すことを目的のひとつと考えた場合、農薬無しで農業を成立させることは、ほぼ不可能ということだ。

 ちなみにこの試験は、植物防疫についての調査研究などを行なっている社団法人・日本植物防疫協会において、1991年、92年に調査されたもの。全国延べ59カ所で、水稲、りんご、キャベツなど主要12作物について、農薬を使った「慣行防除区」と農薬を使用しない「無農薬区」に分け、収量、出荷金額への影響を調べている。無農薬区では農薬は一切使わないことを原則としたが、育苗期の防除や土壌消毒など、最小限の防除を行なわないと、そもそも収穫が得られず、試験が成り立たない場合はやむをえず使用したという。私たちが妄信的に望んでいる無農薬野菜の安定的な供給は、もはや空想でしかない。

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つづく


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