原弘産と合人社
原弘産の原將昭社長(56)は山口県出身。下関中央工業高校を卒業し、70年積水ハウスに入社。設計部門にいたが、78年に営業に異動になったことが転機になる。営業には素人の原氏は、ユニークな発想をした。積水ハウスは戸建て住宅のイメージが強いが、アパートも住宅ではないかと考えアパートを売った。下関地区の地主を回り、アパートを建てた家の税務申告も手伝った。
抜群の営業成績をあげた原氏は昇進して、本社への転勤の辞令を受けた。そこで独立。36歳だった。顧客からアパートではなくマンションを作ってくれという注文を受けた。もともと設計士だった原氏は、その要望に応えるかたちでマンションをつくった。これがマンション分譲のはじまり。93年7月原弘産を設立した。
原氏をユニークな存在に押し上げたのは風力発電。オランダの風力発電機のメーカーから技術を買い取り、原弘産ヨーロッパを設立。風力発電の主な受注残は中国84基、韓国30基。世界でも有数の風力発電会社でもあるのだ。
2001年大証2部に上場。M&A(合併・買収)を進めて規模を拡大。08年2月期の連結売上高は660億円。次なるM&Aのターゲットにしたのが、日本ハウズだったのである。
日本ハウズの買収劇に参戦した合人社の福井滋社長(64)は環境問題の専門家。京都大学工学部卒、同大学院博士課程修了(環境工学)。関西電力建設部技師、広島工業大学助教授を経て、80年に広島市で同社を設立した。公園緑地の設計からスタートし、3年後に分譲マンションの管理業に進出した。
トーメンからトーメン東建物管理、トーメン西建物管理を買収して、首都圏と関西圏に進出。07年3月期の売上高は159億円。同グループのマンションの管理戸数は13万6,846戸(07年3月31日現在)。業界7位で、独立系では日本ハウズに次いで2位にあたる。日本ハウズを傘下に収めれば、業界トップも可能なのだ。
浮動株の争奪戦
日本ハウズと原弘産の攻防が表面化したのは今年2月18日。日本ハウズが自己株式の公開買い付けを発表。これに対抗して原弘産はTOB(株式公開買い付け)の意向を表明した。日本ハウズは、発行済み株式の10%分を約12億円(1株789円)で取得する。一方、原弘産は1株1,000円で50%以上を取得し、日本ハウズを子会社化するというもの。
日本ハウズの大株主が異動した。07年10月には、カテリーナ・ファイナンスからカテリーナ・イノウエへ持ち株の半分の株式譲渡が行われ、持ち株比率はそれぞれ7.55%になった。共同で保有していたハウズ株を小佐野一族と井上一族が半分に分けたということだ。
小佐野、井上の共同創業者一族の確執が進むなかで、ランドマーク=合人社が筆頭株主に躍り出てきたため力関係は逆転した。
原弘産側は、原弘産(10.03%)、井上投資(6.13%)のほか、カテリーナ・イノウエ(7.55%)と井上一族の個人名義の分にランドマーク(11.77%)を合わせると持ち株比率は38.62%。これに対し小佐野氏(会社)側は、小佐野投資(11.24%)、カテリーナ・ファイナンス(7.55%)に小佐野一族の個人名義分を合わせて24.40%。役員や従業員持株会、取引行の三菱UFJ銀行を合算しても35.48%にしかならない。
原弘産側が優勢だが、最終的には、外国人投資家と浮動株の約20%がどちらに動くかで勝負が決まる。7月上旬のTOB実施に向けて、浮動株の争奪戦が火花を散らしている。