P.F.ドラッカーは、昭和44年の著作「断絶の時代」(上田惇生訳)の中で「従業員に忠誠を要求することは、許しがたいことであり、正統性を欠く。組織とその従業員との関係は、契約上のものであって、あらゆる契約関係のなかで最も狭義に解釈すべきものである。このことは、組織と従業員の間に、愛情、感謝、友情、敬意、信頼があってはならないということではない。それらは価値のあることである。しかし、いずれも付随的であって、勝ち取るものである。」と言っている。
ここでドラッカーは、労使の関係とは“契約”であることを明確に提示している。師弟関係でも家族でもなく、支配と服従の関係でもない。しかも、その契約は狭義に解釈することを求めている。このことは、労使相互の権利と義務を明らかにした上での契約締結を示唆する。つまり、正しい雇用契約関係をベースに、他の施策を織り交ぜることで企業は従業員の信頼感を勝ち取ることができるのである。
経営指針を作成し、ビジョンやミッションを従業員との間で共有している企業の体質は強いものがある。社会的存在である企業が社会における存在価値を高めるため、経営陣だけでなく、従業員を巻き込んで社会において役割を果たそうとする意義は大きい。ただ、経営者と労働者との関係は、そう易々と一心同体となれるものではなく、まっこうから対立する概念であることを忘れているケースがたまに見受けられる。
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