従業員に対し、労務や技術や知識の提供を求めるだけでなく、心(ハート)でさえも会社へ提供することを求めるものがある。
経営理念への賛同を条件に従業員として採用するのは良いとしても、理念とかけ離れたところで過大な課題を従業員に求めてはいないだろうか。事業活動には社会への悪い影響を防ぐために法令の制約がかかっている。数値目標を重点にした成果主義の人事制度や歩合給の給与制度が長時間労働を助長しがちなことは、理屈で考えればすぐにわかる。また、形だけの管理職と称して時間外・休日労働手当を支払わないことは、コナカや日本マクドナルドに対する司法判断を見れば労働基準法違反であることは明らかである。
また、人間性や人間力の向上を社員教育の方針とすることは、それが理念として掲げるだけなら許されるだろうが、具体的な評価基準にまで落し込むことは信条の自由を侵害してはいないか。まず社会があって、その後に企業があることを忘れてはならない。始めに企業有りきではない。
労使の関係は契約であり、対等な立場で契約にあたるということを知らずに作成された経営指針書をもつ企業では、長時間労働が長年累積した職場風土となっているケースもある。経営モデルやマネジメントの悪さが結果として、過重労働や低賃金労働となって従業員に皺寄せがきているとも言える。
潜在化された従業員の不満は、企業にとって大きなリスクを抱えることとなる。内部告発だけならまだしも、過重労働の職場では、若い従業員はうつ病、中高年従業員は脳血管疾患を発症させることが統計的にわかっている。労働災害と認定された場合の莫大な賠償額とともに、経営組織に致命的ダメージを与えかねない。
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