和田会長CEO,安部社長COOの新経営陣がいよいよスタートした。社内誌で両氏の挨拶が掲載され、和田会長は、在任10年の節目で市場の変化に対応するため若返りを図ったが、同時に代表取締役としてグループ全体の経営戦略を担い、安部社長とともに舵取りしていくと言っている。従来どおり、経営の権限は変えないということであろう。政府が掲げる200年住宅の推進、サミットの開催で環境問題の高まる中、積水ハウスが過去、率先して推進したことが追い風になっている。社員は自信を持ち業務に臨むように。そして最大の課題は工場生産住宅の販売強化と唱えている。本業の強化のため、お客様本位の再確認、CSの徹底を、と言っている。
安部社長は企業理念を持ち出し、お客に喜ばれる仕事、社会に役に立つ仕事をすれば会社の成長、発展につながる。積水ハウスの行動規範の「私達一人一人が積水ハウスです」「創意工夫を活かし時代に挑戦しよう」と。自らに厳しく、プロとして仕事に厳しく、その上チームの一体感、温かい目を忘れるなと。次に、セクションを越え、他人ごとにせず、遠慮なく自由に意見を交わせる風土を作ろうと。自分が率先垂範していくと言っている。二人の所信表明を見て、特に目新しいことはない。具体的な施策は見当たらず、従前の精神論、建前論の羅列である。このことを受けて社員が意気に感じるだろうか。特に安部社長には期待が大きいのだが、積水ハウスを将来このようにするというビジョンが見えない。単なる営業の大将としての社長でなく、特に本業部門の低迷をどのように立て直すのか 技術部門の商品開発、組織の改革、人事の大幅な刷新等の顔が見える指導者になってもらいたい。
積水ハウスをもう一度、NO1にするのだ!というがむしゃらな姿勢を見せない限り、社員を奮い立たせることにはならないだろう。
競争相手の大和ハウスは100周年に向けスタートしている。50周年で1兆5000億の会社が10兆円を目指すという。これは社員や協力業者に夢を与えるものである。このような壮大な目標を打ち上げながら、樋口会長の社長就任以来、現実には厳しい経営改革が実施されているのである。役員の1年任期制、事業部の廃止、社長直轄の支店制にして支店に全権限の委譲、人事の刷新、3年で30%のコストダウン、と矢継ぎ早に具体的施策を打ち出した。その結果、業績は急速に回復し、積水ハウスを追い抜いて、住宅業界のトップになったのである。樋口会長の基本理念は現場主義、既成概念からの脱却であった。大和ハウスを真似したら、とは言わないが、二番手として追い越すには、相手のやっている3倍のエネルギーを使わないと、追い越せないことを肝に銘ずべきである。
野口孫子 (敬称略)
※記事へのご意見はこちら