朝を制すれば、一日を制する
室内の温・湿度を保つ冷暖房器、空気を浄化する換気システム、そして暮らしを清潔で豊かにする給排水設備。こうした空調や水回りは、快適な生活環境を維持していく上で、不可欠なインフラである。
進興設備工業(株)は昭和26年の創業以来、空調・給排水設備の設計・施工において高い技術力と輝かしい実績をもつ、地場企業のリーダー的存在だ。
平成14年11月竣工の福岡国際会議場では、アジアの玄関口を標榜するプロジェクトにふさわしい高機能な空調システムを作り上げ、その実力をいかんなく発揮。17年にはムーディー・インターナショナル・サーティフィケーションより、ISO 9001:2000の認証も受けている。
一方で進興設備工業は数々の逸話をもつ。その中心人物こそ、このほど会長職を辞して相談役に就いた舩津政隆氏に他ならない。特に昭和54年の社長交代劇に纏わるエピソードは、社史に残る話だ。
同社はこの年、業績不振に陥った。不安を抱いた若手社員は一斉に退社を決意し、当時部長職にあった舩津氏にその旨を打ち明けた。
ところが、同氏自身が一緒に辞表提出を決めたことで、驚いた的野オーナーは同氏に対し、「危機打開には君が社長を引き受けてくれることしか方策はない」と嘆願した。
舩津氏はオーナーの必死の形相を目の当たりにし、「絶対に潰れない、噂の出ない会社にします」と社長就任を受託したという。
また「朝を制する」という伝説も舩津氏が社長就任にあたって、経営の基本に据えたものだ。以来、進興設備工業では「役員会議は朝5時半開始」「女性スタッフの朝7時出社」「技術部隊の7時現場到着」等々が定着。「朝を制すれば、一日を制する」という企業原理は、同社成長の原動力になっている。
与信管理を厳しくし負債リスクを回避
もっとも、与信管理については、進興設備工業は実に手厳しい。これにも舩津社長に関わる逸話がある。
同社は福岡市南区の東建設が倒産した時、1億円近い債権を負った。ところが、舩津社長はその手形や証文を信用調査会社に提示することで、東建設の経営実態を公開。時間を稼ぎながら、回収の目途をつけようとした。結果的に不良債権は当初の設定通り、5000万円の枠内に収まったという。
2回の不当たりを出した建設会社のケースでは、癌に冒された建設会社社長に対し、舩津社長は倒産後も生命保険をかけ続けた。
一般債権者からは社長の存命中、「癌は嘘では」との話も出たが、倒産から2年半後に社長が亡くなり、舩津社長は3億円の保険金を債権者に分配。配当額は80%にも達した。
恩義を感じる相手には義理堅く、大事の前の小事は厭わない。進興設備工業が無借金経営で、税引き利益率が対売上げ10%以上を10期以上持続したのは有名な話だ。
これも舩津社長の経営手腕を持ってすれば、納得いくことである。
[プロフィール]
舩津 政隆(ふなつ まさたか)
進興設備工業株式会社 相談役
会社住所 福岡市南区玉川町4-2
TEL:092-551-6883
URL:http://www.shinkoh-s.com
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