5月10日、ニューヨーク先物取引所で、WTIの原油価格が史上最高価格、1バーレル、126ドルをつけた。連日の最高値の更新だ。一説では150ドル、いや200ドルになるとも言われ始めている。いろいろな要因が複合してるだろうが、世界的株価の低迷、金融が不安定のため、投機資金
、投資ファンドの資金が原油、穀物、鉄鋼等に流入しているためといわれている。
原油価格の高騰は益々世界経済を窮地に追い込むことになる可能性がある。このような情勢を受けて、世界一のトヨタが今期2009年3月期減収減益の見通しを発表した。鉄鋼、燃料などの原材料価格の上昇と、アメリカ経済の低迷による販売不振、日本国内も車の市場の縮小がとまらないことが原因と言われている。トヨタ首脳は「経済の潮目は変わりつつある」として幹部に意識改革を求めている。
トヨタの渡辺社長は、かつての石油危機、円高不況の時に実践したトヨタ流節約を復活させている。トヨタの、乾いた雑巾を絞るように経費を削減してきた社風が、このところの成長の中で、一部ゆるみ始めているとして、全社に節約意識をもっと徹底させたいという考えのようだ。世界のトヨタが危機感を持って社内の意識改革の手を打ち始めた。
積水ハウスも、住宅産業においては、地方都市では長期不況のうえ人口減少で、住宅着工は減り始め、先行きのばら色は期待できないだろう。毎日の経済ニュースはサブプライムローン問題、原油価格の高騰、小麦、とうもろこし価格の高騰等、人類が未経験なことばかりである。
積水ハウスは創業以来、大筋では、右肩上がりで成長してきた。本当の意味では現経営陣は成功体験しか語れないだろう。しかし、これからは過去の成功体験は全く通用しない。成功体験に縛られると、大きな失敗に結びつくことが多い。古い話だが、日露戦争で勝利した日本は、慢心して超大国米国と戦い、太平洋戦争で壊滅的敗戦。戦後、焼け野原から高度成長し、バブル期にはまたも慢心で、世界から世界一とおだてられるうちに、米国の土地まで買い漁り、バブル崩壊とともに不良債権化。10年以上の超不況を経験してしまったのである。積水ハウスも「NO.1」とおだてられるうちに慢心して、改革の手を打ってなかったのだろう。
今こそ、経営者の能力が求められる時代に突入していることを認識すべきである。「戦争論」を書いたクラウゼビッツは「戦争では確実なものは何もない」と言っている。孫子は「兵は詭道なり」と言った。「兵には常形はない」という意味だ。経営も戦争に例えると、不確実で90%仮説で動いているということである。不確実を少しでも確実にするためには、社長と部下のコミュニュケーションが大事で、社長のビジョン、グランドデザインを部下と話し合い、徹底しないと先行き不透明の時代には勝てないのである。
ひらめの部下ばかり重用し、周りにイエスマンばかり配置してる組織では、熾烈な競争社会、不確実な時代に生き残れないだろう。積水ハウスが競争相手の会社に追いつき追い越すためには、社員に向かって建前を論じる前に、経営者の意識改革が緊急の課題だろう。
野口孫子 (敬称略)
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