5月18日(日)NHKスペシャル「沸騰する都市ドバイ」という題名で特集番組を放映していた。見た人も多かったのではないだろうか。砂漠の真中に出現した黄金の都市。現在、2兆円の巨大プロジェクトが進行している。地上には800mの世界一超高層ビルを、海には世界一の巨大人工島を建設中で、このようなプロジェクトが20以上あるとか。
いまドバイは不動産ブームに湧いている。不動産価格は年率20%値上がりしているという。建設中にもビルが販売され、次々と転売され、完成時には5割以上値上がりしているとか。殆どが居住用に購入されているのでなく、投資用に購入されている。ドバイには製造業はなく金融と観光だけ。最近は資材の高騰や労働力不足で計画も頓挫するケースもあり、ばら色の未来とは行かないこともありそうだ。
ドバイにおける不動産の購入客の80%は投資目的との事からして、いったん世界の海千山千の投資家が売りに回れば、バブル崩壊ともなりかねないリスクを孕んでいる。日本企業の中東への進出に躊躇するのが多い中、商慣習の違い(発注元開発業者からの建築中での設計変更やデザイン変更は当たり前)、労働力不足、外国人出稼ぎ労働者の雇用等、相当なリスクを覚悟して進出しなければならない。
積水ハウスにとってドバイは、総額10兆円を越える巨大プロジェクトで、魅力ある市場には違いない。チャレンジが吉と出るか凶と出るか誰にもわからない。ただ、無茶な投資はして欲しくない。田鍋時代の失敗例に学ぶ慎重な姿勢が大事だろう。世界では富める者と貧しい者とに二極分化が進んでいる。ドバイも富める人々の投機により世界のお金集まっているのである。市場原理主義が世界を横行している。市場原理主義は自由競争と同じであり、日本もその激しい競争社会に突入している。勝つか負けるかは二つに一つ、確率は半々だが、実際は一人の勝者に9人の負けが普通である。
アメリカを見ればわかる。上位1%のアメリカ人が富の50%を所有している。日本の一億総中流はすでに過去の事、格差は広がるばかりだ。少し昔の日本では、会社は従業員の物であった。社員の忠誠心とそれに応える終身雇用制度という人間関係があり、リストラは企業としてしてはならないことであった。不況になれば、まず役員から給料を下げた。極端な実力主義より年功序列を基本に普通の人を大事にした。この経営のやり方で経済大国になれた。なぜ今、日本型資本主義を捨て、市場原理主義なのか。日本人は惻隠の情、人を思いやる心を自然に持ち合わせていた。田鍋の言う「人間愛」だ。積水ハウスの社員の中の一部に、崇高な田鍋の哲学「人間愛」を横において、和田という勝ち馬に乗ろうとしているのが横行している。田鍋が築いた社員の価値基準、文化、伝統、倫理を毀損しつつある。もう一度、積水ハウスは社員全体のものと認識すべきだろう。
アメリカ大統領候補オバマが言う。「CHANGE,HOPE,YES,WE CAN!」
野口孫子 (敬称略)
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