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積水ハウス100周年を目指して (34)市場原理主義はなじまない| 愛する積水シリーズ
連載コラム
2008年5月26日 11:10

日本でも市場原理が猛威を振るっている。自由競争の名の下に、各自利己的に利潤を追求していれば、社会は全体的に豊かになるというものである。自由競争こそが一番。国家が規制したりせず、自由に任せる。即ち、市場に任せるのが一番好いという考え方である。アメリカ帰りの経済学者が、この思想にかぶれ、日本でもてはやされ急速に主流の考え方になりつつあるのである。

この考えはアダム・スミスの「国富論」に書かれている。17~18世紀、彼に続く古典派経済学者たちが完成させた理論である。しかし、各自の利己的な利潤追求を自由気ままに放任し、福祉はどうするのか、弱者や敗者が大量に発生するが、誰が面倒見るのか、このような問題を何ひとつ解決していないことは、アダム・スミス以来、戦争、植民地、経済恐慌に明け暮れていたことは、二世紀にわたる歴史が証明している。

この考え方をイギリスの経済学者ケインズが、1930年代に初めて批判したのである。ケインズは国家が公共投資などで需要を作り出すことの重要性を説いたのである。ケインズの考えは驚きをもって迎えられ、「ケインズ革命」といわれている。アメリカは金融恐慌を迎えていたが、このケインズの理論を導入し成功したのであった。現在、日本の国家予算が不況の時、赤字国債を発行し公共投資を増やして需要を喚起し、景気浮揚を図るのは、この理論によるのである。

しかしながら、アメリカの経済が低迷していた1970年代には、アメリカの経済学者ハイエクやフリードマンらがケインズ理論を批判し、再び古典派経済学を担ぎ始めたのである。経済がうまく行っていないのは、どこかに規制が入って自由競争が損なわれてからだという理論だ。この理論が今アメリカでは主流で、市場原理主義と言われるものだ。

現代も、アメリカ帰りの日本のエコノミストはこの理論にかぶれている人が多い。小泉内閣時代の元経済担当大臣、竹中平蔵氏が代表格だろう。アメリカで自由競争するのは一向に構わないが、アメリカのシステムを押し付けられ、弱者切捨ての荒廃した社会に日本が陥ることが心配である。すでにその兆候が現れている。弱者の老人向けに、後期高齢者医療保険の実施、ホリエモンを代表格に、法に触れなければ、何をしても良いという拝金主義が日本国民にはびこる時代になってきている。日本のよき伝統、武士道にある惻隠の情、相手を思いやる心を失いつつあるのではないだろうか。

積水ハウスも、田鍋(元社長)が経営哲学にしていた、役員、幹部、社員、お客様、取引先の人々との「人間愛」を基本理念していたが、現経営陣はわが身だけよければ良いという考えで拝金主義になっていないか。会社が不況の時は、真っ先に社長、役員から報酬、賞与をカットするもの、順次、上役からカットすべきもの。それをせずして社員に号令をかけても、動きはしないだろう。有価証券報告書を見ていると、役員の報酬はお手盛りで増やしている。一方社員に対しては、数年前、成績不振を理由に、年4回の賞与を3回に、年収が大幅に減ったことを社員は忘れていない。


野口孫子  (敬称略)


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