21世紀は水とアラブの時代となるであろうと前述した。水不足、干ばつはオーストラリア、アメリカ南東部で起きている。ミャンマーを襲った大型サイクロンは壊滅的打撃を与えた。水不足、干ばつは地球温暖化の影響と言われている。益々この水危機の傾向に拍車をかけるだろう。このことは将来穀物不足、食料不足にもつながる問題でもある。世界は地球環境、経済、さまざまな予期しないことが起きている。アメリカで始まった経済改革の柱、市場経済はとどまるところを知らない勢いである。
欧米支配のこの経済システムは、石油、穀物がマネーゲームの中に取り込まれ、人間の生活の基本に大きな影響を与えている。マネーゲームによる食料の値上がりは弱者を直撃している。言葉はグローバル化と響きがよく、美しいが、正に金銭至上主義である。やがて人々はこの欧米のやり方の拝金主義を忌み嫌い、崩壊するだろう。
一方、マネーゲームによりアラブは原油の高騰で莫大な富を獲得し、その巨大資金でUAEのドバイの大開発を行い、それが投機を呼び込んでいる。このようなドバイの発展が象徴するように、すでにアラブの時代が始まっているのである。
積水ハウスも国内での住宅販売のかげりを補うため、中東ドバイに活路を見出すべく、緒についたばかりである。しかしながら、住まいはその国の長い歴史に込められた文化そのものである。前述したように、アラブ世界に我々は馴染みがうすい。アラブといえば砂漠をイメージする。「飛んでイスタンブール、光る砂漠」という歌があるが、イスタンブールには砂漠はない。我々はアラブについて、そのレベルの知識しかない。
積水ハウス、和田会長に焦りがあるのではないか。田鍋元社長の語録の中に、「安くていい住宅を大量に供給することが使命になっている。そのため他の事をやる余力はない。多少儲けても、本業で儲けてこそ値打ちがある。他で儲けても蓄積にはならない。」と本業に徹することを話している。本業以外への逃げ道を塞いで、本業でしか生きられないことで、背水の陣を引いていたのである。
和田は世界の風潮に流され、マネーゲームの真只中に、ビジネスチャンスを見出そうとしているが、冷静に見て事実上の創業者田鍋の言葉は重い。田鍋は、赤字続きで親会社の積水化学が潰そうかという時、社長として派遣し、以来10年で先発の大和ハウスを抜き去り、業界トップの座を勝ち取った。その後30年にわたり首位を走り続けたのである。
しかし田鍋亡き後、奥井社長に続き、和田社長が就任、僅か数年で大和ハウスに首位の座を奪われてしまうのである。和田社長(現会長)の責任は重いと見るべきだろう。当時の奥井会長が、大和ハウスに首位を明け渡すことがはっきりした時点で、その責任を取り、会長を辞任したという噂は本当だったのでは?現業の責任者は和田社長(現会長)にもかかわらず、会長職の奥井は、田鍋に申し訳ないという気持ちが強かったのだろう。
「経営には一服の休みも許されない。不断の努力と前進あるのみ。状況の悪さに怯んではならない。壁を乗り越える勇気が必要だ。地道な努力の積み重ねが成功に導くことを信じよう!」と田鍋は言っていた。積水ハウスの社員には今でも脈々と田鍋の教えが息づいていることを、幹部が理解しておかねば積水ハウスの反転攻勢はありえない。
野口孫子 (敬称略)
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