「福岡への提言」 日豊経済圏、そして空港
九州経済発展のカギはどこに
福岡県のことを考えたときにまず思い浮かぶのは「博多」であろう。実際に福岡市に人も物も一極集中している現状は否定できない。しかし、福岡県、北部九州、九州全体を考えたときに拠点となる都市が福岡一市だけで本当によいのだろうか。
現在は道州制議論が盛んで九州は一つという考え方が強くなっている。しかし私は九州は二つに分かれていると考えている。一つは福岡市を起点に鹿児島まで続く鹿児島本線沿線の経済圏、もう一つは北九州市を起点に宮崎まで続く日豊本線沿線の経済圏である。2つの経済圏を比べたときに、どちらが発展しているかは一目瞭然である。本当に九州は一つという考え方を持つのであれば日豊本線沿線の経済圏がもっと発展していく必要がある。だが現実には福岡市のみが拠点であればよいという考え方から福岡市につながる鹿児島本線沿線の鉄道や道路ばかりが整備され著しく発展している。ここから脱却し強い九州を作る為には日豊経済圏の起点である北九州市に拠点性を持たせることが九州全体の発展のために大変重要である。
北九州市の拠点性に注目すべき
過去、両政令市の間に大きな格差がなかった時代、当時の福岡県知事は、両政令市を龍の両眼に例え、双方が共に発展していくことが福岡県ひいては九州の発展につながるという見解を示していた。しかし近年北九州市は深刻な鉄冷えによって衰退し、その後の産業転換もうまくいかなかった。このように龍の片眼が濁ってしまった事が日豊経済圏の発展にブレーキをかけてきたのである。
しかし、最近北九州市にも新しい北九州空港の開港を契機に新たな可能性が見えてきた。臨空産業団地にはトヨタが立地し、鉄に変わる産業都市としての顔を持つことが出来つつある。またハイテク産業の進出も顕著で新日鉄全盛期の北九州市の姿が戻りつつある。また福岡空港の混雑を解消する為に国際線を北九州空港に移し、さらに国内・国際航空貨物の九州の基地とするならば北九州市の拠点性はさらに高まるだろう。
問題は福岡空港混雑解消に調査機関が出した結論から近隣空港との連携が外されたことである。この答申には分散によって福岡都市圏の市民の利便性が損なわれるといった理由や北部九州の拠点としての機能が失われるといった理由が書かれている。この理由から調査機関が福岡市の利便性のことしか考えていないことがわかる。しかし福岡市だけが九州ではない。九州全体のリーダーを福岡の政財界の方々が自認するのであれば、まず近接する大都市である北九州市の拠点性にもっと注目しても良いのではないだろうか。さらに北部、中部、南部の九州各地に複数の拠点都市を持つこと、それらをスムーズに結ぶアクセスを作っていくことなども考慮すべきだろう。これが出来て初めて九州は一つになれる。
道州制の時代は地元エゴだけで物事を考えていくべきではないというのが私の持論である。
[プロフィール]
井上 秀作(いのうえ しゅうさく)
昭和44年4月23日生まれ(38歳) 駒大卒
平成13年:北九州市議会議員選挙で初当選(現在2期目)
平成14年:新北九州空港懸賞論文で優秀賞を受賞、空港政策に詳しい
平成15年:自由民主党市議団幹事長(現自由民主党市民クラブ)に就任、以来4年間、幹事長として市議会の自民党会派を運営した。
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