百花繚乱を競うケータイ--。だが携帯電話端末メーカーは、サバイバル戦に突入した。国内外の携帯電話市場からの撤退が相次ぐ。今年1月に三洋電機が携帯電話事業を京セラに売却、3月には三菱電機が完全撤退、ソニーがNTTドコモへの供給事業から撤退すると発表した。海外では、京セラが中国の携帯電話市場から撤退。中国の携帯電話市場には、日本メーカーが進出したが軒並み撤退。最後の1社だった京セラも完敗し、日本勢は全滅という結果となった。
世界で売れない日本のケータイ
日本では、iモードが花開き、薄型で美しい液晶を搭載し、音もきれいで高機能のケータイが次々と出る。サービスでも端末でも、日本のケータイは「世界一」といっても過言ではないだろう。それなのに、撤退に次ぐ撤退だ。日本メーカーの携帯端末が売れなかったのは、企業努力が不足していたからではなかった。
理由は簡単。見た目は同じでも、日本と世界では通信構造がまったく異なっているためである。端的にいえば、郵政省(現・総務省郵政事業庁)とNTTが、世界標準に背を向けた携帯電話の独自規格を押し付けたからである。その結果、日本メーカーのケータイは日本でしか売れず、世界ではまったく売れなかったのだ。日本の通信行政の戦略ミスが、携帯電話産業の世界市場での敗北をもたらしたのである。
日本独自の規格
勝負の分かれ目は、日本が第二世代携帯にPDC(Personal Digital Cellular)方式を採用したことにあった。携帯電話は、通信技術によって第一世代、第二世代、第三世代に区別されている。第一世代は、自動車電話から採用されてきたアナログ方式。肩から提げるショルダーホーンやハンディサイズの端末が生まれた。
都市部での契約者増に対応するため1993年にデジタル方式でのサービスが開始された。このデジタル方式が第二世代。この第二世代の携帯に採用されたのがPDC方式である。これは、NTTの研究所が開発した独自規格で、郵政省の意向により、1993年から日本の全携帯電話端末メーカーが採用した。
一方、世界の国々は第二世代携帯の規格に欧州で開発されたGSM(Global System for Mobile Communications)方式を採用した。そのため、GSM方式が世界標準になり、PDC方式は世界では使用できない端末になったのである。
つづく