自民党県議団 小山 達生 福岡県議会議員(宗像郡選挙区選出)
「新福岡空港促進協議会」(会長=鎌田迪貞・九州電力相談役)は、4月初め、「新福岡空港を新宮・奈多沖に建設する」という見解を発表した。また、福岡空港調査連絡調整会議(国・県・市で構成)は「ステップ4」を年内にまとめるとも言われている。「福岡空港」をどうするのか、新たな段階を迎えている今、改めて各界からのご意見を弊誌にて紹介していくことにしたい。今回は、自民党県議団・小山達生県議(宗像郡選挙区選出)に話を聞いた。
必要経費の問題は
—新福岡空港促進協議会が「海上に新空港をつくる方向で国や県に働きかける」という結論をまとめましたが、ご感想をお聞かせください。
小山 新宮沖の相ノ島との間に建設ということでしょうが、環境問題を考えるとその場所がもっとも適しているのではないでしょうか。都心から一定の距離があるということで、新空港促進協議会が結論を出したのだと思います。しかし、空港を建設するには経費の問題を抜きに考えることはできないので、もう少し検討する必要があるでしょう。個人的には、福岡市の雁ノ巣沖あたりがつくりやすいと思っています。
—新設する経費は2兆円とも言われています。新空港をつくりたいという人々のなかにも異論があるのではないでしょうか。
小山 今まで、計画段階と実際の経費との落差があまりにも大きかったことに対して、嫌がっているのではないでしょうか。「どうして最初から必要経費を県民に分かりやすくしないのか」という意見が出るでしょう。そのあたりが不安ですね。
—PI(パブリック・インボルブメント)が「ステップ4」に向かうにあたり、市民団体から「具体的な事業費をきちんと明らかにすべきだ。ステップ4は海上につくるという前提で行なわれているのではないか」いう意見も出されています。
小山 「新空港ありき」で議論が進んでいるようには見受けられません。役所では、「滑走路を増設すれば良いのではないか」という意見が強いみたいですね。しかし、民間を中心に「拡張では今後の発展への期待が薄くなる」という意見が強く、右に揺れ左に揺れながら議論されているということでしょうか。
—海上空港建設の有力な理由のひとつとして、現空港を拡張しても賃貸料や防音などの莫大な空港対策費が未来永劫続くため、それよりも安くつくという意見があります。
小山 新空港をつくれば、最低でも50年、100年たっての収支バランスがどうかという問題もあります。ですので、どちらもあまり変わらないと思います。それなら思い切って新空港が良いということなのでしょう。私は新空港の方が良いと思います。
国の対応
—小山議員は1995年に国際空港誘致対策調査特別委員会の委員長を務められ、そのときには議論が二転三転しましたが。
小山 私が委員長に就任する前までは「九州国際空港論」一本でした。九州国際空港ということで、長崎、佐賀、熊本が手を上げ、収拾がつかない状態でした。委員会では、いつまでも九州国際空港という名称にとらわれることはないということになり、その後、私が議長になったときに「福岡空港の建て替え」ということで、九州各県の了解が得られたという経緯があります。しかし、福岡県内でも県南を中心に「佐賀や熊本空港で良い」という意見も出され、まとまらない。また「新北九州空港ができればかなりのお客が流れるだろう」ということで、「新福岡空港」論が議論の本流にはなりませんでした。
—この10数年間に佐賀空港ができ、新北九州空港もできました。これを見ても、国の航空行政に大きな問題があると思います。
小山 一番の原因は、成田空港をつくった経過のなかで当時の運輸省が自信を喪失し、リーダシップを発揮できなくなったことにあると思います。それまで運輸省が先頭に立って進めてきていたのですが。新福岡空港がどうなるのかは、成田で失敗した旧運輸省が自らの主導性を取り返すことができるかにあります。麻生県知事が最終的には国の問題であるとしてボールを投げ返していますから、国としてゼロから議論を出発させるということになっています。
—今年初めに「新空港をつくれば都心部の価値が3兆円上がる」という報道がありましたが、これは国土交通省の調査です。国が新空港建設に踏み切ったと思いましたが。
小山 これを発表して、有識者の意向を探ることが狙いだと思います。新空港をつくるということは、旧運輸省にとっては大決断になりますから、慎重です。国としての結論はまだ固まっていないと思いますね。
—少子高齢化社会も到来しています。「今後の需要が切迫するのならば、今すぐ発着を減らすなどの対応をすべきだ」といった声、3空港「機能分担」論、増設論などさまざまな意見が根強くあります。また、議論そのものに不信感を持っている人もいます。
小山 空港をつくるまでは国や自治体の責任がありますが、その後は航空会社の判断が大きいと思います。福岡—東京間は各社のドル箱ですから、便を減らすことはしないでしょう。国や県に全部責任があるという意見は、その辺を理解されていないのかもしれません。「とりあえず空港を拡張して」おいて、その後、「需要予測が正解だった。新空港を」ということになれば、25年後、30年後になるのかまったく予想がつきません。
高まる福岡への期待
—新空港を建設するには20年かかります。その間に世界、アジア、福岡も変わると思います。
小山 わたしは日中友好議員連盟の会長をしていますが、「どうして空港をつくらないのか」と中国の人からいつも言われます。「新空港をつくったら中国から大勢の人が九州を訪れるよ」と。それはなぜか。「空気がきれいだし、街が汚れていない」からです。今も船で大勢の人が福岡に来ていますが、飛行機に替わったら、中国各都市から飛んできます。街がきれいなのは、観光都市としての価値があるということです。観光だけではなく、環境政策を学びに行きたいという各界各層の声もあります。
政治的な問題が発生しなければ、中国の成長は続くと思います。今、中国は東北三省に力を入れていますから、これからは上海のような発展を遂げていくのではないでしょうか。福岡への期待度が高まっていますが、このことは需要予測には入っていないと思います。
—福岡県では空港問題をどう議論されていますか。
小山 国から求められて情報を提供するぐらいです。県としては、国の結論待ちということでしょう。麻生知事は今年中に新空港案を表明すると思います。
—最後に、空港議論を県民全体のものにしていくためにはどうすれば良いのでしょうか。
小山 本年には、執行部がある程度の方向付けを行なうと思います。議会に空港対策調査特別委員会がありますので、委員会の内容を県民に伝え、県民の声を活かしていくことが私たちの最低の仕事としてあると思います。
—お忙しい時にありがとうございました。
小山 こちらこそありがとうございました。