敗戦後の混沌とした時代、NHKのラヂオ番組「日曜娯楽版」で、日本国民の多くが笑顔を呼び戻されています。三木鶏郎、三木のり平、河合坊茶などが醸し出す痛快な風刺コントが数々組み込まれていました。
オープニング・ソングは「もしもし、あのねあのね、こぉ-れから、はぁ-じまる冗談音楽」でした。 少年TやSたちは競ってラジオの前に坐ったものです。 三木鶏郎(1914~1994)作詞作曲の歌「僕は特急の機関士」は当時大変な人気を博しました。
♪僕は特急の機関手で/可愛い娘が駅毎に/居るけど3分停車では/
キスする暇さえありませぬ/東京 京都 大阪ッ うぅうぅうぅうぅポッポ―
昭和22年開始の「日曜娯楽版」は“NHK史上最高の番組”だとか、“聴取率百%の傑作ラジオ番組”であるとかと評されて、昭和二十年代の超人気番組となりました。この番組の初期は、貧しい庶民の生活を扱ったものが多かったのですが、次第に政治批判の性格を強めていきます。聴取者からの投書を取り入れ、庶民の表現の場ともなっていきます。当時の庶民にとっては胸のすくコントの連続でした。
しかし、講和条約が発効されNHKが編集権を握ってからは、政府筋の圧力が強まり、昭和29年の造船疑獄を機に、遂に番組は廃止の憂き目に逢いました。
世の中、庶民が何も言えなくなったらもうおしまいです。そういえば最近、権力を鋭く風刺するコントが少なくなった気がします。今このとき、為政者にチクリとお灸を据えるコントにお目にかかりたいものです。かつての「日曜娯楽版」のような番組を放映してくれるテレビ局はないものでしょうか。
小宮徹
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