何を優先するか
■山積する課題
これまでの三回の記事で、なぜ佐賀市役所の改革を急いだか?それは、人口減少、特に働く世代の人口減少がとても佐賀市に厳しいものだったからということを説明しました。では、市長就任後、すぐさま少子化対策に全力をそそいだかというと、そう簡単ではありませんでした。
当時の佐賀市が抱える課題は、他にも沢山ありました。毎年、市役所の借金が増えていっていること。それにもかかわらず、第三セクター方式の商業ビルの開発や土地区画整理、あまり必要のない新たな道路の建設、300億円のごみ焼却炉の建設、衰退する中心商店街、全く手のつけられていない行政改革。保育所に入れなくて、順番待ちをしているたくさんの保護者。主要産業は公共事業依存の建設業しか産業がないこと。
ある程度は、予想はしていましたが、就任後にすぐに行った事業説明を聞いて、外から見ていてはとてもわからない課題が山ほどあったことに、びっくりしてしまいました。
課題は大きく分けて次の四つでした。
1.バブルの考え方に染まった事業によってもたらされる税金の無駄遣いをどのように食い止めるか
2.これからも人口が拡大していくという前提で計画された事業を、どのように人口減少時代にあったものに見直していくか
3.主要産業が公共事業に依存する建設業しかなく、それに変わる産業をどのように育てていくか
4.目標管理はいうまでもなく勤務評定すら行われていなかったずさんな経営をどのように近代化していくか
■どれから手をつけるか。いつまでにやるか。
では、どれから手をつけるか。いつまでにやるか。これを決断しなくてはなりません。特に困ったのが、使える職員が少なかったことでした。せいぜい全体の二割くらいでした。法律で定められていた職員の勤務評定すら、行われていないような状況でしたので、どの職員が優秀であるかということもすぐにはわかりませんでした。ですから、同時並行でいくつもの課題に取り組むこともできません。しかも腹心である助役は、ある議員に嵌められてしまって、思うような人選もできませんでした。
どこから手をつけるか悩みに悩みましたが、まず、バブルの考え方に染まった事業によってもたらされる、税金の無駄遣いをとめることから手をつけることにしました。そして、バブル的な事業の見直しと、佐賀市役所の体質を人口減少の時代にあったものに改めることに目処がついた後に、本格的に産業振興に取り組むことにしました。
市長を三期12年やる予定でいたので、一期目はこれ、二期目はこれ、三期目でここまでという大きな方向性を定めていました。今、振り返って見て、この順番でよかったかどうかはわかりません。産業振興を先にすべきであったのかもしれませんが、私の決断はこのようなものでした。
なお、参考までに一期目で廃止したり大幅に見直したりしたものを表にしていますので、ご覧下さい。
勤務評定も行い職員数も減らす等の「行政改革」をすぐさま始めたかったのですが、自分の味方になる議員の数との関係で、行政改革を本格的に始めるのは二年後にすることにしました。
というのは、佐賀市議会で私の応援をしてくれるのは、民主党と自民党の中の新人のグループと一部の良識的な人たちでしたが、この方たちだけではとても過半数はいきません。社民党と公明党の議員が私の政策を支持してくれるのかどうかが、議会で予算や条例が可決されるかどうかの鍵でした。
バブル的な事業を止めることと同時に、行政改革も始めると、自民党の守旧派だけでなく社民党が敵に回ることになり、私の提出する議案はどれも否決されることになります。それで、全て手がついていないことを知りながら、本格的な行政改革に取り組む時期を遅らせることにしたのです。自治労の支持を得て当選した首長が、行革に本格的に取り組めない理由と似たようなものですが。
次回は、佐賀市営ガスの売却のお話などをしたいと思います。
★(株)データマックスでは、来たる6月26日(木)、木下敏之前佐賀市長を講師に迎え、「財政破綻を防ぐための体験的自治体経営論」というテーマでセミナーを開催します。詳細はこちらから[PDF] >>
※記事へのご意見はこちら